(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

【ポイント1】オフショア開発拠点として存在感が高まる

■アジアの中でも高い経済成長を続けるベトナムには、企業にとって様々な投資の魅力があります。脱中国の動きで加速する製造業の「生産拠点」としての魅力や、中間層の増加と購買力向上による「消費市場」の魅力に加えて、ソフトウェアやシステムの「オフショア開発(海外での開発業務)」の拠点としての魅力も高まっています。

 

■この背景には、ベトナムのIT人材の増加があります。ベトナム政府は2020年6月に、「2025年までの国家DXプログラムおよび2030年までの方針」を発表するなど、大学におけるIT人材育成に注力してきました。また、外資系IT企業の誘致を積極的に行っていることで、関連する国内IT企業の増加やIT技術者の雇用促進につながっています。こうした政府のIT人材の育成策や企業誘致などの政策効果により、ベトナムではIT産業が急速に発展しています。

 

■デジタルトランスフォーメーション(DX)により、世界のあらゆる国や産業でデジタル化が加速しています。IT人材に対するニーズが一段と高まるなか、ベトナムは今や、ソフトウェアやシステムのオフショア開発の拠点となり、IT人材の供給源に変貌しつつあります。日本企業がベトナムのオフショア開発を利用し、IT人材を積極的に活用する事例も増えています。

【ポイント2】ベトナムのIT最大手「FPT」を企業訪問

■弊社のプロダクト・スペシャリストが1月下旬にベトナムに出張し、IT企業の最大手「FPT」を訪問しました。

 

■FPTは、ベトナムを代表するIT企業で、ベトナム国内だけでなくグローバル展開による成長を続けています。同社は1988年創立、ベトナムのIT産業の礎を築きました。2000年以降は安い人件費をいかし、オフショア開発で急成長してきました。2005年には日本法人を設立し、今では数多くの日本企業と提携しています。

 

■同社の事業は多岐にわたりますが、テクノロジー部門(売上の約6割)、通信部門(同約3割)、教育サービス部門(同約1割)が3本の柱です。

 

■同社はインタビューで、テクノロジー部門での競争優位性を強調しました。ベトナムには新興IT企業があるものの、同社が強みを持つ企業間取引や政府向けのソフトウェア開発で追随できる企業はないとしています。

 

■また、アジアにおいても、日本や米国の多国籍企業の現地企業関連案件が増加するなか、タイ、マレーシア、インドネシアには、めぼしい地場系企業はないとしています。そのため実質的にインドIT企業との競争になるものの、同社はコスト競争力と柔軟な対応力ではインドIT企業を上回っているとアピールしました。

 

■注目されるのは、ソフトウェアと並んで成長中の教育事業です。成長性・収益性ともに高く、ビジネスとしての成功を収めています。小中高から大学まで経営しており、10万人を超える学生がいます。

 

■ベトナムのIT産業の礎を築き、人材育成を通じて将来の成長をも担う、ベトナムを代表する企業「FPT」。ベトナム経済の高成長を追い風に、同社には更なる成長の伸びしろがありそうです。

 

【図表】FPTの株価と一株当たり利益(EPS)

 

 

(2024年2月19日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『企業の“脱中国”で加速するベトナム投資、「ITオフショア開発でも注目」のワケ【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。

 

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