FPが提案した「3つ」の相続対策
Cさんが働き始めたことで、筆者が懸念していたポイント1つ目「夫婦のうちどちらかが亡くなると、貯蓄を取り崩す生活になる」は解消されましたが、「相続」の問題が残っています。
Cさんの収入は65歳まで月収25万円、その後の年金は月額約12万円の見込みです。Cさんがこのまま働き続けることを前提に、筆者は次の3つの相続対策を提案しました。
①自宅のリフォームをして、その費用はAさんの預金から捻出する
自宅のリフォームをしても不動産の資産価値が上がらなければ、Aさんの預金が減る分相続対策になります。
Cさんが相続が発生するときまで実家で生活していれば、「小規模宅地の特例」により、宅地の330m2まで評価額を最大80%削減できます。ただしこの特例は、次の②「相続税精算課税」と併用はできません。
②「相続税精算課税」を利用した生前贈与をする
2024年1月1日から改正された「相続税精算課税」では、従来の2,500万円までの特別控除に加えて、毎年110万円までの基礎控除が創設されました。この制度を利用して、毎年110万円までの範囲でCさんに生前贈与を行います。
また相続資産額は、相続時ではなく生前贈与時の価格で算出しますから、両親が保有している株式の株価が今後上昇する見込みがあれば、2,500万円までの特別控除で生前贈与しておきます。
なお、相続税精算課税を選ぶと暦年課税に戻ることはできません。
③上記①と②の可能な対策を実行後、両親が亡くなったあとは実家を売却する
Cさんが生涯単身で生活するのであれば、居住費を抑えるために両親が亡くなったあと実家を売却し、売却益でワンルームマンションを購入するか賃貸住宅に入居するのもひとつの手です。
上記3つの提案を聞いたAさんは、「おかげで相続の目途はつきました。ただ対策は早期にしたいけど……」「C、お前が今度の会社で働けるか、1年間は様子をみることにしよう」と言いました。
忙しくなったCさんからの“嬉しいサプライズ”
その後、しばらくして、Cさんから筆者のもとに電話がありました。A家は筆者の提案どおり、相続については上記の①と②を実行することにしたようです。
しかし③については、Cさんのユニークな人柄が社内で受けているようで……。
「生涯独り身かどうか、怪しくなってきたんです(笑)」50歳のCさんですが、これからの人生に前向きな様子で、楽しそうに近況を話してくれました。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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