(※写真はイメージです/PIXTA)

前年から続く日本株の好調さ。日経平均株価はバブル期以来34年ぶりの水準をつけています。その理由について株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は、「米国の存在」を指摘します。日本株高の背景にはいったいなにがあるのか、またこの流れは今後も続くのか……詳しくみていきましょう。


一方、中国「資金流出」が深刻化…当局は人民元“買い支え”へ

一方、中国は深刻な経済困難に陥っている。国内ではバブル崩壊と消費の落ち込みによるデフレ化が進行している。金融緩和が不可欠だが、それは資本流出と人民元安圧力高を高める。2022年までウォール街は中国応援団が多数派で、ワシントンの警告を無視して対中投資を積み上げてきた。

 

しかしレイ・ダリオ、ジム・ロジャースなどのパンダ・ハガー(Panda hugger)は中国の独裁恐怖政治の確立、反スパイ法の制定、中国バブル崩壊と経済困難により対中政策を転換し対中投資の回収に走り始めた。これが中国株独歩安の原因となっている。

 

出所:中国外貨管理局、武者リサーチ
[図表3]中国の国際収支関連指標推移 出所:中国外貨管理局、武者リサーチ

 

図表3に見るように、中国ではサービス収支、一次所得収支の大幅な赤字に加えて、資本規制下にありながら、大幅な資本流出が起きている。今のところ

 

①コロナ禍の下での海外工場の稼働低下で中国の生産シェアが高まったこと

②ウクライナ戦争で対露禁輸の間隙を縫っての対ロシア貿易急拡大と言う特需が効いていること

 

により大幅な貿易黒字が続いている。2023年3Qには外貨準備高を積み上げるなど、外貨事情は小康状態である。しかし中国の賃金はアジア新興国中で最高になっていること、米国の対中輸入規制などにより今後の貿易黒字は大きく減少していくだろう。

 

表面的安定とは裏腹に中国の米国国債保有額が急減しており、人民元買い支えが進行していることがうかがわれる。中国による巨額の新興国融資のリスケ・債権再評価、中国が依存してきた外国資本のさらなる引き上げなどにより、外貨事情は深刻化し人民元安圧力は高まり続けるだろう。

 

ロシアとの間で進行する人民元決済、脱ドル化の流れはドル国際決済システムから排除された2国間の苦肉の策であり、人民元の信認が高まっているわけではない。

 

図表4に見るように、今の中国人民元の実質実効レートは歴史的高水準にある。アジアで最高賃金に到達した中国にとって、今の人民元は著しく不利なレートであるが、その不利なレートを外貨不安を取り繕うために維持しなければならない、という二律背反は深刻である。

 

出所:BIS、武者リサーチ
[図表4]主要国通貨の実質実効ルート推移 出所:BIS、武者リサーチ

 

出所:米財務省、ブルームバーグ
[図表5]主要国米国国債保有額推移 出所:米財務省、ブルームバーグ

 

 
 

米中対立下の米国の高圧経済環境

米国経済ソフトランディングはほぼ確実、企業収益は2023年2Qを底に回復に転じている。背景に米国で高めの需要を維持し、大恐慌型の供給力過剰・需要不足状態を回避とようとする高圧経済政策が機能していることがある。

 

図表6に見る積極財政策(対GDP比財政赤字6%)に加えて、新産業革命、AI・ロボットを駆使してのイノベーション、その結果としての企業の生産性の上昇、好業績も大きい。企業の高利潤は配当と自社株買いを通してほぼ社会に還元され、資産所得による新規の需要・雇用創造が進められている。当然潜在成長率は高まり、自然利子率が上昇する。

 

Higher for Longer、高金利の維持とは、経済の地力が高まり、これまでのような低金利ではインフレやバブルなどの過熱を招くという恐れが高まっていることを示している。長らく割安であった株価が、現在の金利水準ではほぼ適正水準となってきており、バブル化するリスクが強まっている。FRBは過度の株価上昇を警戒するだろう。

 

この米国の突出した経済の強さと金利高はドル高をもたらす。覇権国通貨ドルはその強力な技術優位と企業の稼ぐ力により、さらに強化されていくだろう。

 

強いドルは米国が海外から安く仕入れ海外に高く売ることを通して米国に不当と思えるほどの交易利得とシニョリッジ(=返済義務のない借金)をもたらす。強いドルによって倍加される米国の経済優位性は、時間をかけつつ専制諸国家を圧倒していくに違いない。

 

米国に対抗して向こうを張る中国の通貨不安と対比すれば、覇権争いの経済的帰結はほぼ明らかではない。

 

出所:米財務省、FRB、ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表6]米国財政収支の対GDP比推移 出所:米財務省、FRB、ブルームバーグ、武者リサーチ

 

出所:OECD、武者リサーチ
[図表7]財政収支対GDP各国比較 出所:OECD、武者リサーチ

 

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武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年12月30日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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