(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、ニッセイ基礎研究所の上野 耐志氏が、2024年、日本の金融市場のテーマや展望について解説します。

2. 日銀金融政策(11月)

[図表12]日銀の長期国債・ETF買い入れ額

 

(日銀)維持(開催なし)

11月はもともと金融政策決定会合が予定されていない月であったため会合は開催されず、必然的に金融政策は現状維持となった。次回会合は、今月18日~19日にかけて開催される予定となっている。

なお、11月6日に植田総裁が名古屋市で講演を行い、国内の経済・物価情勢と日銀の金融政策運営について説明がなされた。

 

内容は基本的に10月MPM(金融政策決定会合)後の総裁会見の内容を踏襲したもので、物価目標の達成に関しては、「現時点では、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っていない」としつつも、「2%の物価安定の目標に向けた見通し実現の確度が少しずつ高まってきている」と改めて表明した。

そのうえで、今後、物価目標達成のカギとなる「賃金と物価の好循環が強まっていくか」の見極めのポイントして、「先行きも賃上げが続き、社会に定着していくか」と「企業が賃金等の上昇を念頭に置きながら販売価格を設定するスタンスが強まるか」という2点を挙げた。

講演後の質疑応答では、物価目標達成が見通せる時期やマイナス金利政策とYCCの撤廃順序について問われたが、植田総裁は10月MPM後と同様、具体的な言及を避けた。

その後、11月9日には、10月MPMにおける「主な意見」が公表された。

政策委員の意見として、「賃金と物価の好循環を通じた2%目標の達成には未だ距離があるため、金融緩和の継続を通じて賃上げのモメンタムを支え続けることが重要である」、「物価上昇を上回る賃上げが実現するかはまだ不透明であり、このタイミングでイールドカーブ・コントロールを修正すると、金融引き締めと受け止められる可能性がある」など、ハト派的な意見も依然として見受けられる。

しかしながら、「来年の賃上げ率は本年を上回る蓋然性が高い。物価安定の目標の実現が視野に入ってきた」、「2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現の確度は7月の会合時点と比べ一段と高まっている」、「金利の存在する世界への準備に向けた市場への情報発信を進めることが重要である」など、物価目標達成への自信を強めていることがうかがわれる発言が明らかに目立ってきている。

 

今後の予想

今後の金融政策について、植田日銀は物価目標の持続的・安定的達成への自信を強めつつあり、近い将来における大規模緩和の正常化を指向していることも明白だ。

問題はそれがいつかなのだが、しばらくはデータを見極める時間帯になる。来年4月には、完全ではないにせよ、来春闘での高めの賃上げ実現がデータとして確認できるため、そのタイミングで正常化へと舵を切ると見ている。

日銀は金融政策正常化の手順を明らかにしていないが、このタイミングで、YCCの解除(現在「ゼロ%程度」としている長期金利操作目標を取り下げ)とともに、マイナス金利政策を撤廃、無担保コールレート誘導目標を0~0.1%で復活すると予想している。

日銀による前向きな情報発信が最近増加している点、来春闘での賃上げが従来想定していたよりも進む可能性が高まってきた点を踏まえ、マイナス金利撤廃の予想時期を従来より1年前倒しした。

ただし、米経済は今後減速に向かい、来年4月の段階ではまだ十分な持ち直しが確認できていない可能性が高い。また、来春闘での賃上げがどれだけ物価に波及していくかにも不透明感が残っているだろう。

 

物価上昇率が先行き2%から下振れするリスクも相応に高い。従って、正常化へと舵を切るものの、あくまで極端な緩和策を取りやめる措置に留めるだろう。

 

長期金利の上限目途(1.0%)や指値オペの枠組み、国債買入れは継続するとともにゼロ金利政策の継続を強調することで、市場金利の過度の上昇を抑えて緩和的な金融環境を継続させる役割を担わせると想定している。

 

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次ページ3.金融市場(11月)の振り返りと予測表

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月21日に公開したレポートを転載したものです。

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