(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、ニッセイ基礎研究所の上野 耐志氏が、2024年、日本の金融市場のテーマや展望について解説します。

2024年はどんな年?

今月もまだ12月FOMCといった重要なイベントを残しているものの、来年2024年は金融市場にとってどのような年になるのだろうか? 来年のスケジュールも確認しつつ、内外の主な注目材料を点検してみる。

 

[図表7]2023年末~24年の主なスケジュール(見込み)

 

■注目材料(1):米国経済・物価情勢と利下げ

まず、来年の市場を展望するうえで最も注目されるのは、今年の市場を大きく左右した米国経済・物価情勢と金融政策の行方だ。

米国経済は7-9月期の実質成長率が前期比年率で5.2%に達するなど堅調に推移してきたが、最近では減速を示す指標が増えてきた。物価上昇率は直近10月のPCEデフレーターで前年比3.0%と伸び率としてはまだ物価目標(2%)を上回っているものの、低下傾向にある。こうした中、金融政策は利上げ打ち止めの見極め段階にある。

 

[図表8]米物上昇率の実績とFOMC参加者見通し

 

来年、これまでの利上げ効果などから米景気が減速し、米国の物価上昇率が物価目標に向けて着実に低下していけば、FRBは実質金利の過度の上昇を抑えるため、段階的な利下げを開始することになる。利下げが現実味を帯びて市場で織り込まれるにつれて、米長期金利が低下し、日本の長期金利の抑制要因になる。

 

ドル円にとっては、米金利低下に伴う日米金利差の縮小が円高ドル安要因になる。日本株にとっては、円高と米景気減速が逆風になるものの、米金利低下と利下げに伴う景気回復期待を受けた米株上昇という追い風の影響が上回り、トータルで見ると上昇要因になる可能性が高い。

ちなみに、米景気が減速に留まらず、急激に悪化する事態となれば、利下げペースが速まることで日本の長期金利への低下圧力と円高圧力がさらに強まることになる。米景気悪化と円高を受けて、日本株への下落圧力も強まるだろう。

一方、利上げの効果が足りず、物価上昇率の低下が遅れたり、再び上昇に転じたりするような事態になれば、FRBは政策金利を高い水準で据え置かざるを得なくなる。この場合には、利下げの織り込み後退を通じて米金利が上昇するため、日本の長期金利には上昇、ドル円には円安ドル高、日本株には下落にそれぞれ働くだろう。

 

■注目材料(2):日銀による金融政策正常化の行方

次に、国内に目を転じた場合に最も注目されるのが日銀による金融政策正常化の行方だ。日本の物価上昇率が物価目標の2%を優に超える状況が長期化するなか、2023年春闘での賃上げ幅拡大や予想物価上昇率の上昇などを受けて、日銀は物価目標達成への自信を強めつつあり、YCCの撤廃やマイナス金利政策の解除といった正常化を視野に入れるようになってきた。

 

今後、植田総裁の言うところの「第2の力」にあたる「賃金と物価の好循環」が強まっていくかがポイントになる。

来年、日銀が金融緩和の正常化に舵を切れば、日本の金利には上昇圧力になり、ドル円にとっては日本の金利上昇等を通じて円高ドル安要因になるだろう。株価に対しては、金利上昇が追い風になりやすい銀行株を除き、総じて下落要因になるだろう。

 

■注目材料(3):主要国における選挙の行方

また、来年は多くの主要国において国政選挙が行われる([図表7]参照)ため、その行方も注目される。

なかでも、とりわけ注目されるのが11月に行われる米大統領選だ。足元では、現職のバイデン大統領(民主党)とトランプ前大統領(共和党)が対決する構図となる公算が高まっている。

 

トランプ氏の政策の全容はまだ不明だが、仮に同氏が勝利した場合には、税・財政や対外政策、移民政策や地球温暖化対策(エネルギー政策)といった幅広い領域で現行政策の大幅な転換を目指す可能性が高い。FRBに対する利下げ圧力を強める可能性もある。そして、大統領選と同時に行われる議会選の結果も同氏の掲げる政策の実現性を左右する。

その際の市場への影響は現状では測りがたいが、政策の予見可能性が大幅に低下することは避けられそうもないため、市場が不安定化する可能性が高い。

また、1月に行われる台湾総統選も要注目だ。結果次第では中国が反発を強め、米中対立のさらなる激化を通じて世界経済の下押し圧力になりかねないためだ。

 

■注目材料(4):NISA拡充の影響

そして、最後の注目点は制度要因だが、NISAの拡充となる。来年1月から、現行の一般NISAに該当する「成長投資枠」の年間投資枠が現行比で2倍に、つみたてNISAに該当する「つみたて投資枠」の枠が3倍に引き上げられる。

NISA拡充によって家計の投資が促進される場合には、その投資マネーが国内の株式に向かえば直接的な日本株高圧力に、海外株に向かえば円安圧力になる(その場合は間接的に日本株にとってもプラスに)。

 

やや極端かもしれないが、貯蓄から投資へのシフトが起こり、銀行預金の減少に繋がる場合には、銀行の国債購入余力の低下を通じて金利上昇圧力になる可能性もある。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月21日に公開したレポートを転載したものです。

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