55歳・創業社長「保険料が経費にできないのは面白くないね」…〈生命保険〉による退職金積立のメリットは消えたのか?【経営者専門FPが解説】

55歳・創業社長「保険料が経費にできないのは面白くないね」…〈生命保険〉による退職金積立のメリットは消えたのか?【経営者専門FPが解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

経営者であれば、引退後の将来を見据えた「退職金」の準備に頭を悩ませることもあるでしょう。税制改正により退職金積立における生命保険活用の税金対策効果がなくなったといわれていますが、本当なのでしょうか。本稿では、株式会社FPイノベーションの代表取締役・奥田雅也氏が相談事例を基に、生命保険活用の際に注意すべきポイントについて解説していきます。

生命保険で「税金対策」のタイミングをコントロールする方法

税理士のセッティングで社長と面会し、現在の法人生命保険に関する経理処理ルールを簡単に説明の上、解約時の返戻金が支払保険料を上回る可能性がある2つの商品を提案しました。

 

筆者の提案を聞いた社長は「保険料が経費にできないのはあまり面白くないね」という反応でしたので、筆者から以下のような説明をしました。

 

「支払保険料は損金にはなりませんが、ご勇退時に退職金として積立金を支払うと退職金は一定額までは損金になります。この退職金による損金はその期以降の決算で利益が出た際に法人税を安くする効果がありますので、長い目で見れば同じなんです。昔は支払保険料が損金に、解約時の返戻金が益金になり、退職金損金に充当させていましたので、一言で言えば『入口損金』が『出口損金』に変わっただけです」

 

まだピンと来ていない様子でした。そこで、

 

「この積立をより効果的に行うために『引当金』を会計上、積立していくんです」

 

と伝えたところで、同席の税理士が説明を始めました。

 

「引当金とは、将来の支出や損失に備えるために貸借対照表の負債の部で積み立てる金額です。たとえば退職金は、退職金を準備する期間はある程度の年数が必要なのに退職金を支給する事業年度は原則1年です。この準備期間と支給時期との会計上のバランスを取るのが『引当金』という仕組みです。ただ現在は、役員退職給与引当金は税法上の損金としては認められておらず、あくまでも退職金支給時に決算書上に赤字を出さない仕組みです」

 

そこで一旦言葉を切り、次のように説明を続けました。

 

「たとえば、5,000万円の退職金を10年間で準備をするとすれば、1年あたり500万円になります。これを決算書上で引当金として計上すると、決算書では利益は500万円減りますが、法人税の計算ではこの500万円は引けないので、法人税申告書で加算をして税金計算をします。

 

この処理を10年続けて10年後の事業年度に退職される際、5,000万円の役員退職金を支給すると、引当金を計上していない場合は5,000万円の赤字になりますが、計上していれば会計上の積立金を取り崩すことになるので赤字にはならず、一方で法人税を計算するときは5,000万円を差し引けるため、法人税を抑えられます。

 

仮にこの決算期に、ほかの損益はプラスマイナスゼロで退職金支払の5,000万円分がそのまま赤字になった場合、法人税計算上の赤字はその先10年間は使えるので、専務が社長になった後、しばらくは法人税の負担がないというメリットもあります」

 

こうした説明を受けて、社長は「一言で言えば、私の代で税金を減らすか息子の代で税金を減らすかの違いということですね?」と確認したので、税理士と筆者は頷きました。

 

「将来のことはわかりませんが、少なくとも私が辞めるまでは余程のことがない限りこの会社も大丈夫だと思いますし、息子に代替わりしたときに税金が安くなるのなら、それも良いかもしれませんね」と話しながら、筆者が提示をした設計書を眺めていました。

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