税務調査官「あの方は誰ですか?」→社員「社長です」のやりとり…“分掌変更に伴う役員退職金”の取り扱いで不利になるワケ【税理士が解説】

税務調査官「あの方は誰ですか?」→社員「社長です」のやりとり…“分掌変更に伴う役員退職金”の取り扱いで不利になるワケ【税理士が解説】

分掌変更とは、代表取締役や取締役が会長や監査役に退きながらも引き続き会社に在職することです。役員退職金を経費に落とすだけで、形式上は分掌変更しようとする企業は少なくありませんが、分掌変更に伴う役員退職金が法人の経費として認められるにはいくつかの点に注意しなければなりません。本記事では、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)から、分掌変更に伴う役員退職金の取り扱いについて解説します。

金融機関折衝の場面の同席は必ずバレる

〇 ほとんど出社しない。いつ来て、いつ帰ったのか誰も把握していない状況が最もよいといえます。社内出勤管理表(ホワイトボードや社内ツールその他一切)に一切掲載しないことです。

 

〇 金融機関折衝の場面では絶対に同席しないことです。金融機関への反面調査ですぐに発覚します。次後継者が金融機関折衝の仕方がわからないから、という理由で同席する場合も多いのですが、それは分掌変更「前」に引継ぎをしておくべきことです。これは、

 

・後継者への引継ぎで経営などの重要事項に関与してアドバイスを行う

・顧問税理士、顧問弁護士等々との会社に経営に係る事項に係る相談業務面談に出席する

 

という場面でも同じことがいえます。

 

〇 通帳、金庫の鍵があれば一切持たせないこと。手形帳、小切手帳、取引先名簿などの管理を一切しないこと。会社に係る経費のチェックもしてはいけません。

 

〇 仮に分掌変更後も会長等が社用車を利用している場合の利用状況について経営に重要でないことであることを疎明する必要があります。上記までを考慮すると、ほとんど利用できません。できれば利用をやめるべきです。

 

〇 大株主又は拒否権付種類株式(黄金株)の所有の有無を確認します。東京地裁平成20年6月27日判決のとおり、「株主として、議決権という権利を通じて間接的に影響を与えること」と「経営に直接かかわる役員の立場」は全く別です。したがって大株主であることは問題にはなりません。

 

しかし、黄金株については会社の重要な意思決定に関して関与できることから、経営に関わっていると判断される可能性もないわけではありません。この点、現時点で裁決・裁判例が皆無のため、今後の動向に注視が必要です。

 

また、属人的株式で議決権を多めに持っていることについての判断も現時点では実務通説はありません。

事業継承は、事前に入念な話し合いを

こうして見ると、事業承継というと税理士としては株式を現オーナーから後継者へ円滑に異動するという視点ばかりから見ていますが、本来的な意味での経営承継はその前段階に社内でよく話し合い、現実として承継移行していることを確認する必要があるともいえます。

 

税理士は経営承継には何もアドバイスできないため、上記の税リスクを事前に説明した上で、それが社内で完結しないかぎり税務上否認される可能性があることを明確にしておくべきです。

 

 

伊藤 俊一

税理士

 

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※本連載は、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 2法人編

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