税負担は15倍になったが…税収は「ほぼ横ばい」
たばこ税は過去38年で15倍に増えましたが、税収増にはどの程度つながっているのでしょうか。
財務省の資料によれば、たばこ税が大幅に増税されたにもかかわらず、税収増の効果はほとんどなかったことがみてとれます。
すなわち、たばこ税の税収の額は、1985年に1.75兆円だったのが、1986年の税率引き上げを経て、1987年に2兆円に達しました。その後、複数回の増税がありましたが、おおむね2兆円台~2.3兆円台で推移してきています。そして、2021年時点では2.03兆円となっています。この間、「紙巻きたばこ」の販売数量は1994年に3,344億本だったのが2021年には937億本と、3分の1未満に減少しています。([図表3]参照)
つまり、たばこ税が15倍に増税されてきたのに対し、たばこの消費量は減少してきており、その結果として税収はほぼ横ばいで推移しています。喫煙人口自体の減少のほか、増税をきっかけとしてたばこの本数を減らしたりやめたりした人も多数いるとみられます。
たばこ税の増税により得られる「効果」は?
このように、たばこ税を増税しても、そのたびにたばこの消費量が減少し、税収が増えていないという実態が顕著にみてとれます。一部報道によれば与党・政府は加熱式たばこの増税により2,000億円程度の税収増加を見込んでいるとのことですが、その根拠は明らかではなく、本当にその効果が得られるか、未知数といわざるを得ません。
なお、たばこ税の増税によってたばこの消費が抑制されれば、結果として、医療費や介護費用が抑制され、社会保険料や税負担の軽減につながるという議論はありえます。
現に、厚生労働省の研究班がまとめた「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究」(2018年)によれば、2015年の喫煙に伴う超過コストは2兆5,000億円であり、そのうち「超過医療費」は1兆6,888億円(能動喫煙1兆3,594億円、受動喫煙3,295億円)、「超過介護費用」は2,617億円となっています。これらが削減されれば、結果として国民の経済的負担の軽減につながるという議論は成り立ち得ます。
政府・与党には、たばこ税を増税する目的と効果について、改めて慎重に試算したうえで検討することが求められます。
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