【プロジェクトマネージャーの苦悩】「人員は足りないが、なんとかやってくれ」…トップのムチャぶりへの正しい切り返し方

【プロジェクトマネージャーの苦悩】「人員は足りないが、なんとかやってくれ」…トップのムチャぶりへの正しい切り返し方
(画像はイメージです/PIXTA)

プロジェクトの現場にはいつも「想定外」「トラブル」と隣り合わせです。危機的状況につぶされることなく、関係部門と調整を図りながら目的を達成するには、どのような視点・行動が必要なのでしょうか。孫正義氏のもとで〈プロマネ〉を務めた三木雄信氏が解説します。※本連載は『孫社長のプロジェクトを最短で達成した 仕事が速いチームのすごい仕組み』(PHP新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

「プロマネの権限」を超えた範囲まで、自力で解決しないこと

 Q 

明らかに人員が足りないのに、「どこも人が足りないみたいなんだ。なんとかこれでやってくれないか」とオーナーから言われてしまった。それでも増員を要請すべきか?

 

 A 

安請け合いは厳禁。プロマネは、「上に球を投げ返すマインド」を持ちましょう。

 

この場合、もしオーナーが社内で強力な権限を持つ人物であれば、まずは戦ってみる必要があります。

 

「これだけの工程をこの人数で回すのは現実的に不可能です。オーナーの力で、各部署にもう1度掛け合ってもらえませんか」

 

そう言って増員を依頼するのが基本の対処法です。

 

ただし、オーナーにそれほど権限がない場合もあります。

 

社長ならすべての機能部門に対して権限を持ちますが、例えばサービス企画部門の部門長がオーナーなら、自分の権限で情報システム部門の人員を動かすことはできません。

 

その場合、まずはプロマネが情報システム部門の部門長に増員を依頼します。

 

「今の人数では納期まで6ヶ月かかるが、どうしても4ヶ月で納品しなくてはいけない。工程数から考えると、現在10人でやっている作業を13人にしないと間に合わないので、あと3人出してもらえないか」

 

このように、プロジェクトの納期や工程などを具体的に示して交渉してください。

 

それでもダメなら、あとは納期を遅らせるか、品質を調整するしかありません。

 

これはオーナーの意思決定が必要なので、改めてオーナーであるサービス企画部門の部門長と話し合います。

 

「情報システムの部門長と交渉しましたが、増員はできないとのことです。現状の人員でやるしかないのであれば、納期を6ヶ月に延ばすか、あるいは4ヶ月後の時点でベータ版を納品し、その後2ヶ月でバージョンアップするか、いずれかの選択肢しかありません。どちらを優先しますか」

 

このように、サービス企画部門の部門長に判断を委ねます。

 

つまり、ボールをオーナーに投げ返すわけです。

 

プロマネの権限でやれることはすべてやったのですから、あとはオーナーの責任です。

 

オーナーも自分のところに権限が戻ってくれば、「だったら自分が直接、情報システム部門の部門長に交渉してみるか」と考えて、本部長同士で交渉するはずです。

 

その結果、「やっぱり人員は増やせないから納期は延ばす」という判断になるのか、「納期は絶対守る必要があるので、とりあえずベータ版を出そう」という判断になるのか。

 

いずれにしても、それはプロマネの責任の範囲ではありません。

 

プロマネは本部長同士が話し合って決めた意思決定に従い、実行するだけです。

 

大事なのは、プロマネが自分の権限を超えた範囲まで自力で解決しようとしないこと。

 

権限を持たないプロマネが権限を持つ相手と戦っても、返り討ちにあうだけです。

 

自分の権限でやれることをやったら、権限を本来持つべき人に戻し、上の人間の話し合いで意思決定してもらうことが必要です。

 

「上からふってきたことは何でも言われた通りにやらなければいけない」と思っているかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、安請け合いは絶対にしてはいけません。

 

またプロマネは、自分では解決できない問題を上に投げ返すマインドや、権限を持つ人たちをうまく使いこなそうとするマインドを持つべきです。

 

「これはプロマネの権限ではないので、あなたが決めてくださいね」と言って、適所に権限をどんどん投げ返し、相手に意思決定させれば、プロマネは現場を回すことに集中できます。

 

上の人間に自分で意思決定させれば、あとになって「あのプロマネは俺が思っていたのと違うことをやっている」などとクレームをつけられることもありません。

 

プロマネが余計な責任を負わされないためにも、また1人で抱え込んでつぶれないためにも、権限の範囲やありかを常に意識して動くことが大切です。

 

 

三木 雄信
トライズ株式会社 代表取締役社長

 

※本連載は、三木雄信氏の書籍『孫社長のプロジェクトを最短で達成した 仕事が速いチームのすごい仕組み』(PHP新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

孫社長のプロジェクトを最短で達成した 仕事が速いチームのすごい仕組み

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三木 雄信

PHP研究所

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