派遣先のエリート社員と結婚、タワマン生活へ
30代の専業主婦、由香さんの身に起こったケースです。
由香さんは大学卒業後、新卒で入社した会社が合わず退職。その後はずっと派遣社員としてあちこちで働いていましたが、数年前、派遣先の大手外資系金融会社で夫となる孝弘さんと出会い、結婚しました。
孝弘さんはエリートで人望も厚く、将来を嘱望されていました。社内外でも孝弘さんに好意を持っていた女性は少なくなく、由香さんは大変な妬みを買ったといいます。
由香さんは、派遣先の女性従業員との関係が悪化し、精神的ストレスを受けて勤務が難しくなったことから、孝弘さんに「落ち着くまで専業主婦となってはどうか」と提案を受け、従いました。
孝弘さんと由香さんは、結婚を機に都内のタワーマンションの一室を購入しました。孝弘さんは結婚後も変わることなく優しく、由香さんはとても幸せな日々を過ごしていたといいます。
生活が落ち着いたら仕事に復帰するつもりだった由香さんですが、親しい友人や親族が次々と出産するのを目の当たりにし、次第に焦りの気持ちが出てきました。孝弘さんに気持ちを打ち明けると、孝弘さんも考えに同意してくれたので、仕事への復帰より、まずは子どもを授かるよう、ライフプランを変更したのです。
幸せな生活に訪れた「まさかの事態」
由香さんと孝弘さんに第一子となる翔太ちゃんが生まれたのは、それから3年後でした。
孝弘さんは順調に出世して仕事も多忙になっていくなか、由香さんも慣れない子育てに奮闘していました。孝弘さんも非常に翔太ちゃんをかわいがり、どんなに遅く帰宅しても、必ず寝顔を見ていたそうです。
しかし、由香さんの人生は暗転します。
平日の夜、由香さんのスマホに知らない番号の着信がありました。
「もしもし?」
「孝弘さんの奥さんですか?」
「そうですが…」
電話の声は緊張でこわばっていました。
「私、孝弘さんの部下の佐藤と申します。孝弘さんが出先で事故に遭いまして…」
由香さんは翔太ちゃんを抱えタクシーに飛び乗り、孝弘さんの部下から聞いた病院に駆けつけました。
交通事故に遭った孝弘さんの状況は重篤で、数日の意識不明のあと亡くなりました。
由香さんはショックのあまり泣き叫び、なにもかも手を付けられなくなってしまいました。そのため、急遽上京してきた由香さんの両親、そして隣県在住の孝弘さんの両親が、葬儀の手続き等を粛々と進めました。