「地盤の悪い土地」「無道路地」「がけ地」を処分すべき理由

前回は、財産の棚卸の結果、処分すべき土地の種類について解説しました。今回も引き続き、処分するべき土地について紹介します。

地盤の悪い場所は「昔の地名」なども参考に

前回に引き続き「Cランク」として位置づけた土地の具体的な種類を見ていきましょう。

 

③地盤の悪そうな土地

2011年3月に起こった東日本大震災のとき、千葉県の浦安市などで土地の液状化現象が起こり、大きな話題となりました。これらは地盤のゆるさから起こったものです。

 

一般的には水と関係した地名がつけられている場所は、地盤がゆるいと言われています。
「渋谷」「池袋」、さらには「蓮沼」「滝野川」など、都区内でも大昔は谷や池、川などがあった場所だということが推測できるところが無数にあります。


今では宅地造成するときに区画整理をして「○○1丁目」などといった住所表示にするのでわかりにくいですが、登記簿謄本などに「何とか山の根」とか「何とか沼」など水に関する地名がついている場所があれば、地盤がどうなっているか留意しておいたほうがいいかもしれません。


また、川も今では改修してなだらかな形状になっていますが、本来の川はもっとうねうねしていたはずです。昔、川の一部だったような場所に土地を持っている場合は、そのまま保有し続けるかどうか、検討するとよいでしょう。


水と縁のありそうなところは一般的に地盤がゆるいと言われていて、不動産としては良質なものとは言えません。謄本で昔の地名を見ると、そうしたことがだいたいわかりますし、地主さん自身も、もともとそこがかつてどういう土地だったかを把握していることが多いはずです。このようにして、地盤がしっかりしていない土地や湿気の多い土地は、選別の際、優先順位を低くしておくことをおすすめします。

道路のない土地はやはり使い道がない

④無道路地

無道路地は「袋地」とも呼ばれるもので、一般的には狭い私道や他人の敷地を通ってしか出入りできない土地のことを言います。

 

こうした土地には、現在では新しく建物を建てることはできません。なぜなら、建築基準法で「建物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していなければならない」と規定されているためです。建物の前の道路が狭いと、火災が発生したときに消防自動車が入れなかったり、避難通路が確保できなかったりする恐れがあります。また、他人の土地を通らないと自分の家に出入りできないようでは、日常生活にも支障をきたしてしまいます。

 

とはいえ、実際に東京の都心部などでは、どう見ても道路に接している道幅が2mもある
ようには見えない袋地に家が立っているところが随所に見られます。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。それは建築基準法が制定された時期と関係があります。建築基準法が施行されたのは昭和25年5月です。それ以前に立っていた建築物については既得権で、法施行後の基準に合致していない住宅でも住み続けることができたのです。また、新築はできないものの、リフォームをすることは可能です。

 

つまり、こうした土地は「リフォームをしてでも住みたい」という人がいたら売れる可能性はあるけれども、建物の老朽化があまりに進んでいて、リフォームではどうにもならないというところまでいっていると、売るに売れない事態が発生するのです。

 

さらにこのような土地は、道幅が狭いため、リフォームなどの工事の際に車を家の前までつけることが難しくなってきます。そのために建築コストが高くつくというデメリットも抱えています。売却する際に不利な袋地は、「欲しい」という人が現れたときに手放してしまうしか手がありません。ですから、なるべく早い段階で売りに出すことをおすすめします。売却金額にはこだわらず、買ってくれるという人がいたら安い金額でもいい、というような気持ちを持ったほうがいいかもしれません。

 

また、無道路地は都心部だけでなく、別荘地や、意外なところでは横浜あたりの海の見える「いい場所」にも存在します。他人の土地を通らないと通行できない場所であっても、相手の人が「いいよ」と言ってくれれば通ることができるので、眺めがよければ売れた時代もあります。しかし、そうした土地も相続を迎えると、相続人にとって「相続はしたものの、使い道のない土地」として悩みの種となることが多いようです。

自治体への寄付も難しい「がけ地」

⑤がけ地

傾斜のあるがけ地も売却しにくい土地の一種です。

 

以前、人気リゾート地の山を登ったところにある別荘地を売りたいというご相談を受けたことがあります。現地調査にうかがったところ、本当に山のてっぺんに近いところなので、車でなければとても行きつけない場所ではありましたが、立派な道が通っていて、通行には何ら支障はありません。別荘地として開発分譲した土地なので、区画もとてもいいですし、向こうには海が見晴らせて本当に素晴らしい土地でした。

 

ところが、それが売れるかどうかとなると話は微妙になってきます。というのも傾斜地なので、建物を建てるには基礎工事でしっかりした足場を組む必要が出てきます。その費用をざっと見積もったところ、3000万円くらいかかることがわかりました。

 

その土地の価格は当時で600万円程度です600万円の土地に建物を建てるのに、足場を組む費用が3000万円。それで果たして買い手がつくでしょうか?


筆者は正直に、「600万円では買い手はつかないでしょう。持っているだけで固定資産税がかかりますから、もし手放してもいいとお考えであれば、100万円でも200万円でも、『その値段なら買ってもいい』という方に買っていただいてはいかがですか」と申し上げました。

 

ところが、お返事は、「そんなに安くなってしまうなら、今すぐ売らなくてもよい」というものでした。持ち主の方にとっては簡単には割り切れないことかもしれませんが、実際には売りにくい土地は安値でも売っておいたほうがいい場合が多いのです。「値下げしてでも売る」という選択肢もあるということを、頭の片隅にとどめておいていただければと思います。

 

また、こんなお客様もいました。その方は観光地としても有名な場所にがけ地をたくさん所有していたのですが、固定資産税を払っていくのも大変なため、市に寄贈を申し出ました。ところがそれも拒否されてしまったのです。最近は全国どこの自治体でも土地の寄付はほとんど受け付けてくれません。

 

がけ地は本当に厄介です。所有し続けることで毎年固定資産税がかかるのであれば、欲しいという人がいたら価額にこだわらず売るくらいの気持ちでいたほうがいいかもしれません。

本連載は、2013年11月1日刊行の書籍『相続トラブルの99%は不動産が原因』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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澁谷 一夫

幻冬舎メディアコンサルティング

親から受け継いだ財産を、よりよい形で次の世代に残す。それが相続本来の目的であるはず。しかし、自身の財産、とくに不動産のことをよく知らないがため、相続人の間で財産を奪い合う。また、無理な対策を行い、財産を不良資産…

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