全団塊世代、いよいよ「後期高齢者」に突入で、医療費の膨張も限界に…高齢者世帯「本当にお金がなくなる」戦慄のシナリオ【FPが解説】

全団塊世代、いよいよ「後期高齢者」に突入で、医療費の膨張も限界に…高齢者世帯「本当にお金がなくなる」戦慄のシナリオ【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

2025年、すべての団塊の世代が75歳へと突入します。これにより、医療費や介護費が大きく膨らむことが予想されますが、各家庭では、どの程度の負担増が見込まれるのでしょうか。また、現時点から対応しておくべきことはあるのでしょうか。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

後期高齢者1人当たり年間医療費90万円×団塊世代の人数

生徒:私も75歳、後期高齢者医療制度に加入することになりました。これから本格的な老後を迎えることになりますが、不安を感じています。医療や介護のことについて教えてください。

 

先生:厚労省によれば、介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性は73歳、女性は75歳だと言われています。2024年に75歳になる団塊の世代の方々であれば、すでに健康寿命の平均値に到達しています。

 

生徒:これからは医療費が心配です…。

 

先生:厚労省によれば、75歳以上の後期高齢者1人当たりの年間医療費は90万円といわれています。これは、75歳未満の平均値22万円の4倍もの金額です。団塊の世代が後期高齢者になることで、医療費はますます膨張していくことになるでしょう。

一定以上の収入がある後期高齢者、窓口負担が「増加」

生徒:このまま国民医療費が増え続けると、大変なことになりますね。

 

先生:実は、高齢者の医療費負担が引き上げられることになりました。単身世帯で年収200万円以上、複数人世帯で年収合計320万円以上の後期高齢者は、医療費の窓口負担が、1割から2割に引き上げられることになったのです。

 

生徒:団塊世代の私たちには不公平な話ですね…。

 

先生:しかし現在、日本における65歳以上の高齢者は4,000万人。人口の35%をも占めています。やむをえないでしょう。

 

(出所)内閣府「令和5年版 高齢社会白書」
[図表1]高齢化の推移と将来推計 (出所)内閣府「令和5年版 高齢社会白書」

公的介護システムも崩壊危機へ

生徒:介護サービスは大丈夫でしょうか。私は子どもに介護を頼りたくないので、介護が必要になったら、有料老人ホームに入るつもりです。しかし、東京都では、介護認定をしてもらえないケースが多く、実質的な要介護状態になっても、なかなか介護施設に入れないとも聞いています。

 

先生:日本の要介護の認定率は、75歳以上では約3割ですが、85歳以上になると約6割に上昇します。90歳を超えたら7割です。年齢とともに、確実に要介護状態になります。

 

生徒:そんなに多いのですか! 介護費用はどれくらいになりますか?

 

先生:生命保険文化センターの調査によれば、在宅介護の場合、介護サービス利用料のほか、ポータブルトイレやシャワーチェアなど福祉用具のレンタル費、おむつ代、食費、バリアフリーにするための住宅改修費などが必要になってくるそうですが、たとえば、自己負担割合が1割、要介護1の人なら、介護サービスを限度額まで利用しても自己負担分は1割の1万7,000円くらいです。

 

[図表2]介護保険の支給限度額と自己負担割合による負担額

 

生徒:なるほど。在宅介護なら、負担はそれほど重くないですね。介護施設に入った場合はどうなるでしょうか?

 

先生:介護施設でも、介護サービスは介護保険を利用するので、支給限度額までは自己負担割合分のみの支払いですみます。毎月3万円くらいでしょう。しかし、居住費や食費、管理費など、介護保険の対象外となる費用が多く発生するので注意が必要です。これらを合計した場合、施設に入ると、少なくても毎月10万円はかかると考えたほうがいいでしょう。東京都で民間の介護施設に入ると毎月30万円を超えるでしょうね。ここまでくると、公的年金だけでは介護費用を支払うことが難しそうです。

 

生徒:ちなみに、介護保険の対象となる費用が限度額を超えたらどうなりますか?

 

先生:超えた分が全額自己負担になります。ただし、限度額を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」の制度があります。一般的な所得の世帯では、1ヵ月の自己負担の限度額は4万円くらいになっていて、高額所得者でも14万円ですね。

 

[図表3]高額介護サービス費の各所得分別の負担限度額

郊外の不動産は売却・換金が困難に

生徒:私は、医療費や介護費用が足りなくなったら、自宅を売ろうと思っています。八王子駅から徒歩20分の一軒家なのですが、売ったお金で十分でしょうか?

 

先生:内閣府の調査によれば、団塊世代の持ち家率は8割超と、大半の人が不動産を持っています。しかし、人口減少のため、郊外の中古不動産を購入する人は少なく、売れたとしても二束三文、もしくは売れない可能性もあるでしょう。古い家屋は解体費用もかかります。自宅を売却しようにも、よほど立地のいいところでないとなかなか難しいでしょう。神奈川、埼玉、千葉なら、最寄り駅から遠い立地だと本当に厳しいと思われます。

 

生徒:そんな状況なのですね、知りませんでした…。不動産が売れなければ、本当にお金がなくなってしまいます。状況がこれ以上悪化する前に自宅を売って、都内のマンションに買い替えることも検討します。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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