「年収の5倍」は古い?10倍を超える首都圏新築分譲マンション価格~それでも返済負担はバブル期の6割に止まる~

「年収の5倍」は古い?10倍を超える首都圏新築分譲マンション価格~それでも返済負担はバブル期の6割に止まる~
(写真はイメージです/PIXTA)

首都圏で新規発売された分譲マンションの平均価格はバブル期の水準を大きく超えています。しかし、住宅取得が遠のいたとは一概に言えず、年収に占める住宅ローンの返済負担率はバブル期と比較して4割程度低下していると言います。本稿では、ニッセイ基礎研究所の小林正宏氏が首都圏の新築分譲マンション価格の現況について解説します。

2.金利水準を見ない「年収倍率」、見る「返済負担率」

首都圏の新築分譲マンションの年収倍率が、「5倍」という目安を超えて10倍にも達しているが、住宅取得が遠のいたとは一概に言えない。

 

頭金を20%用意し、残り80%について住宅ローンを借りたと仮定し、世帯年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合(以下、返済負担率)を試算すると、バブル期の1990年は47.7%(年間返済額312.95万円/世帯年収655.6万円)と収入の半分近くをローン返済に充当しなければならなかった。

 

これに対して、2021年は30.1%(年間返済額178.87万円/世帯年収594.4万円)と、バブル期と比較して返済負担率が4割程度低下している(図表3)。

 

なお、上記の試算では、住宅ローンの返済期間は35年、住宅ローン金利は2007年3月までは住宅金融公庫の直接融資4の基準金利を適用し、2007年4月以降は独立行政法人住宅金融支援機構の「フラット35」の償還期間21年以上35年以内の最頻値を適用した。

 

住宅が購入しやすいか否かは、住宅価格と所得、金利の3要素で決まる。住宅価格や金利が上昇(下落)すれば購入は困難(容易)になり、所得が増加(減少)すれば購入は容易(困難)となる。

 

それらのバランスの中で購入のしやすさが決まるわけだが、アメリカではこれをアフォーダビリティー(Affordability)と呼び、購入しやすい状態をアフォーダブル(Affordable)と言う。

 

バブル期と比較して住宅価格は概ね変わらず、所得は若干減少したが、金利が大きく低下したことで返済負担率が低下し、アフォーダビリティーが上昇したということである。

 

こうした金利低下の具体例を、図表4に示した。返済期間35年の元利均等返済で住宅ローン金利が5%の場合、返済負担率の上限が30%5であれば借入可能な金額は年収の4.954倍、ほぼ5倍となる。

 

例えば、世帯年収を1千万円、返済負担率を30%とした場合、住宅ローンの年間返済額は1,000×30%=300万円、借入額1千万円あたりの年間返済額は60万5,625円、借入可能額の年収倍率は300万円÷60万5,625円=4.954倍となり、借入可能額は4,954万円となる。

 

[図表4]世帯年収1千万円の場合の借入可能額等(単位:万円)

 

同様に、住宅ローン金利が1%の場合、借入可能額の年収倍率は8.856倍(借入額1千万円あたりの年間返済額は33万8,743円、300万円÷33万8,743円=8.856倍)と9倍近くに跳ね上がる。

 

これは、金利が5%から1%に低下することで年間返済額が▲44%も減少するためである。そして、金利1%の低下による借入可能額の増加は、金利水準が低いほど大きくなる(図表5)。

 

実際の金利水準を見ると、バブル期の1990年頃は住宅金融公庫の基準金利が5%前後で推移していた。当時の金利水準からすれば、年収の5倍は返済負担率30%とほぼイコールであり、適切な基準であったと考えられる。

 

しかし、その後市場金利が低下し、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」の最頻値金利は2010年代半ば以降、1~2%近傍で推移している(図表6)。

 

金利1%、返済負担率30%。世帯年収1千万円の場合、借入可能な金額は8,856万円であり、2023年1~8月の平均価格8,893万円にも手が届く計算になる。住宅ローンの変動金利は更に低く、ネット系銀行の中には0.3%を割る水準で融資している銀行もある。

 

この金利水準の場合、年収の10倍まで借り入れ可能という計算になるが、変動金利であること、個々物件ごとに融資可能額が異なることから、実際にそこまで借入可能かは別問題になると考えられる。

 

(出所)ニッセイ基礎研究所が作成/住宅金融支援機構をものにニッセイ基礎研究所が加工作成
[図表5]購入可能額の年収倍率(返済負担率30%を前提)/[図表6]住宅論金利の推移 (出所)ニッセイ基礎研究所が作成/住宅金融支援機構をものにニッセイ基礎研究所が加工作成

 


4:住宅金融公庫の融資限度額は低めに抑えられていたため、実際にはバブル期には首都圏マンションの平均価格の8割まで融資できることはなかったが、時系列分析の都合上、8割まで借りられると仮定しての返済負担率を求めている。

 

5:「フラット35」の場合、返済負担率は年収40は0万円未満30%、400万円以上は35%となっており、借入額は8千万円以下となっている。

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月19日に公開したレポートを転載したものです。

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