アメリカで支払われた給料を日本で「課税」して欲しい…裁判所の判断は?【税理士が解説】

アメリカで支払われた給料を日本で「課税」して欲しい…裁判所の判断は?【税理士が解説】

所得税法における「居住者」を判定するための「居住地判定」。住所である生活の本拠がどこにあるかによって課税ルールも異なってきます。本記事では、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より、事例をもとに税務に関わる居住地判定について、同氏が解説します。

米国で支払を受けた所得に対し、日本で課税はできるのか?

事件の概要

本件は、以下のような事実関係において、原告が平成12年12月の出国日以降、同年中に米国で支払を受けた所得に対し、日本で課税できるか否かを主な争点として争われた事件である。

 

1.平成6年11月、原告は日本法人甲社の代表取締役として勤務するため日本に入国し、以後、継続して日本に滞在していた。

 

2.平成10年4月、原告は米国法人S社に雇用され、その関連会社である日本法人乙社の代表取締役として出向・勤務した。

 

3.平成12年9月、乙社が同本法人丙社を完全子会社化したことに伴い、原告は、乙社の代表取締役を辞任し、同日、丙社の代表取締役に就任した。

 

4.平成12年12月、原告は外国人登録を閉鎖して香港に向け出国(後、米国ユタ州に居住。以下「本件出国」という。)するとともに、同日付けで丙社の代表取締役を辞任した。

なお、原告の家族は子供の通学の事情から、原告の出国後も、引き続いて、原告の出国前の地に居住した。

 

5.平成12年12月、原告は米国法人N社と雇用契約を締結し、遅くとも契約締結日までには、N社との間で、平成13年夏までには日本に常駐してN社の日本担当マネージング・ディレクターとして活動することができるようにする旨の合意を締結したと認められる。

 

6.平成12年12月、原告は、米国内でN社から支度金として50万ドルの支払を受けた。

 

7.平成13年3月、原告は、平成12年12月の出国日以降非居住者に該当することとなり、上記支度金は国外源泉所得であるため日本での課税所得には含まれない、とする内容の平成12年分所得税の確定申告を行った。

 

8.平成13年6月、原告は、その子供が通学するA校の理事に再任され、同月、理事長に就任した。

 

9.平成13年6月、原告の家族は、外国人登録を閉鎖して日本を出国し、これに伴って、同月中に原告の家財及びその他の家財も米国に向けて配送された。

 

10.平成13年8月、原告は家族とともに再び日本に入国し、同年9月、原告は出国前の居住地を住所として外国人登録を行ったほか、原告の家族も翌14年2月、同所を住所として外国人登録を行った。

 

なお、原告は本件出国以降今回の入国までの254日間中、11回にわたって日本での短期滞在を繰り返しており、その滞在日数の合計は110日間に及んだ。

 

11.平成15年6月、課税庁は、原告が平成12年12月の出国後も引き続き居住者に該当するとして、平成12年分の所得税について更正処分及び加算税の賦課決定処分を行った。

 

12.原告は、これを不服として適法な不服申立て手続を経た後、平成17年2月28日、本訴を提起した。

 

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税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 1個人編

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伊藤 俊一

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