(※写真はイメージです/PIXTA)

60歳で定年を迎えてそのままリタイア…となる人は、いまの日本ではもはや「希少種」だ。どこの世帯も老後生活のお金に不安を抱えている。では逆に、いくらお金があれば60歳で仕事を引退し、悠々自適な老後を送ることができるのだろうか。平均値をもとに計算すると、驚きの金額が浮かび上がった。

60歳で定年退職後も、およそ9割が仕事を継続の「ツラい事情」

厚生労働省『令和4年 高年齢者雇用状況等報告』によると、60歳定年企業においてそのまま仕事を辞める人は1割強にしかすぎず、87.1%もの人が、継続雇用を希望する。

 

規定通り定年退職し、その後は悠悠自適に…という流れにならないのは、年金支給開始の65歳までの空白期間を自力で持ちこたえることができないからだろう。

 

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によれば、「収入のすべてが公的年金」という人と「収入の8割~10割が公的年金」という人を合わせると6割超となるが、現状では原則として65歳からの支給となり、60歳で仕事を辞めれば5年間は無収入となってしまう。

 

なかには仕事が大好きで、ずっと働いていたいという人もいるだろうが、多くの人は金銭的な理由で、「しぶしぶ働いている」というのが実情ではないだろうか。そのような人たちは、もし年金の受給を開始してから亡くなるまでの間、不安なく生活できるだけの貯蓄があれば、躊躇なく仕事を辞めることだろう。

 

生命保険文化センターの『令和4年 生活保障に関する調査』で「夫婦2人で老後生活を送るうえでの費用」によると、最低限必要な費用は平均月23.2万円であり、ゆとりある老後生活費は平均月37.9万円だった。

 

100歳まで、夫婦2人が最低限の生活をするなら年間およそ280万円、10年間で2,800万円、40年間で1億1,200万円が必要だ。一方、ゆとりある生活をするなら、年間およそ455万円、10年で4,550万円、40年で1億8,200万円が必要になる。これらを公的年金と貯蓄で賄えれば、60歳定年後、晴れて自由の身になれる。

平均的な年金額+5,628万円あれば、なんとか安心できる…かも

大学卒業後、平均額の給与をもらってきたサラリーマンを例に、60歳定年時にもらえる退職金と65歳から手にできる年金額計算してみよう。

 

60歳定年前、サラリーマンの月収は52.5万円、年収は858.3万円。サラリーマン人生における最高額を手に、華々しく引退することになる。なお、平均的な退職金は月収の40ヵ月分であることから、およそ2,100万円を得られる見込みだが、退職金制度を整備している会社ばかりではないので念のため。

 

65歳となり、得られる老齢厚生年金は月11.3万円。老齢基礎年金が満額なら、月18万円程度の年金を手にする計算だ。配偶者が専業主婦で老齢基礎年金だけを受給する場合は、夫婦で手にする年金額は月24.5万円程度。つまり、上述したゆとりある生活を送るには、月々13.4万円の貯蓄を取り崩す必要がある。単純計算すると、1年で160.8万円、10年で1,608万円、100歳までの35年間で5,628万円が必要だ。

 

忘れてはならないのが、年金が支給されるまでの60~65歳の間だ。この5年もゆとりある生活を送るなら、2,274万円が必要となる。

 

つまり、60歳で仕事を完全引退し、年金+貯蓄で悠々自適な生活を送るには、合計で8,000万円程度の貯蓄が必要なのだ。思わず「なにかの間違いでは?」とつぶやいてしまうが、これが現実なのである。ちなみに、これは退職金を考慮していない。

老後生活、追加費用が発生する局面とは?

平均的な年金額を受給していても、余裕のある暮らしを送るには追加で「8,000万円必要」というのは、かなりの衝撃的な話に思えるかもしれないが、一方で、平均から導いたゆとりある生活のための必要額「月37.9万円」では全然足りない…という人がいるのもまた事実だ。個々の生活水準については、非常に大きな開きがある。

 

いずれにしろ、自身の老後に必要な金額を考える際、日々のやりくりに必要な額を積み上げるだけでは詰めが甘い。安心な老後生活を送るためには、決して見逃してはならないポイントがある。

 

①物価高

老後40年、物価水準が変わらないというのは考えにくい。また、日本銀行は年2%の物価上昇を目指していることから、いま現在を基準に老後資金計画を立てるのではなく、それなりの余裕を持つことが望ましい。

 

②家の改修

自宅は家賃がかからず、お得だという考え方もできるが、経年劣化すれば改修は必須。また、近年の異常気象による大雨や台風、地震等の突発的な災害のリスクも考慮すべきだ。自身や配偶者が年齢を重ねれば、バリアフリーの工事が必要になるかもしれない。これらの費用も見積もっておくことが重要だ。

 

③医療費・介護費

いまは健康でも、明日どうなるかわからないのが高齢者だ。一度の転倒が原因で、以後自力歩行ができなくなるかもしれない。そうなれば、病院や介護施設のお世話になるわけだが、ここでも高額な費用が発生する。老人ホームの場合、一時金は0円~数億円までと幅があるが、もし高級老人ホームへの入居を望むなら、1,000万~5,000万円程度の入居一時金が必要といわれている。

 

収入を年金に依存する高齢者の生活は、物価高の直撃を受けやすい。それを考えるなら、やはり資産運用は必須だといえるだろう。できるだけリスクを抑制しながら、物価高に耐える程度の運用ができれば理想的だといえる。

 

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