(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●日銀の金融政策について、来年4月にYCCが撤廃されマイナス金利も解除されるとの見方に変更。

●変更理由は弊社の賃上げ予想引き上げとインフレ予想の上方修正、日銀の「主な意見」も一因。

●異次元緩和終了でもゼロ金利は続くとみており日銀が対話を十分に行えば市場の混乱は回避へ。

日銀の金融政策について、来年4月にYCCが撤廃されマイナス金利も解除されるとの見方に変更

弊社は10月18日、日銀の金融政策について見通しを変更しましたので、今回のレポートでは変更後の見通しについて解説します。従来、日銀は現行の緩和の枠組みを当面維持するとみていましたが、2024年4月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃と、マイナス金利政策の解除が行われ、長らく続いた異次元の金融緩和は終了すると予想します。

 

見通しを変更した理由は次の3点です。すなわち、①2024年の賃上げ見通しを上方修正したこと、②ドル円の実勢水準を踏まえ、経済予測の前提となる為替レートを1ドル=140円から145円に変更した結果、当面の物価上昇率の減速ペースが鈍化する見通しとなったこと、③10月2日公表の、9月21日、22日に開催された金融政策決定会合の発言内容をまとめた「主な意見」で、異次元緩和からの出口を巡る活発な議論がみられたことです。

変更理由は弊社の賃上げ予想引き上げとインフレ予想の上方修正、日銀の「主な意見」も一因

①について、弊社はこれまで、2024年の平均賃上げ率を3.0%程度と予想していましたが、直近の日銀短観における業況が想定以上に堅調であったことなどを踏まえ、3.3%程度に上方修正しました。②について、為替レートを円安方向へ修正したことで、消費者物価指数(生鮮食品を除く)の見通しは、2023年度が前年度比+2.7%から+2.8%へ、2024年度が同+1.8%から+2.0%へ、それぞれ引き上げられる形になりました。

 

③について、具体的な発言をいくつかまとめたものが図表1です。これをみると、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するタイミングに言及するものや、YCCの役割終了とも受け止められるコメントに加え、マイナス金利解除でも緩和継続とする発言や、物価の上振れリスクや賃金上昇に強気の見解が確認されます。これらを踏まえると、9月の会合では、異次元緩和の終了をある程度視野に入れた議論が行われたと推測されます。

 

[図表1]日銀の「主な意見」

異次元緩和終了でもゼロ金利は続くとみており日銀が対話を十分に行えば市場の混乱は回避へ

日銀は、2024年3月中旬ごろの春季生活闘争(春闘)の集中回答を確認後、4月の展望レポートを改定し、「物価安定の目標」について、持続的・安定的に実現する確度が高まったと判断する見通しです。それに伴い、日銀はYCCの撤廃とマイナス金利政策の解除に踏み切り、すでに形骸化しているETFおよびJ-REITの買い入れ停止と、「オーバーシュート型コミットメント」によるマネタリーベース拡大方針の廃止も予想されます。

 

異次元緩和の終了により、日本国債の利回り上昇、日本株の下落、ドル安・円高の進行が予想されることから、日銀が長期金利急騰時の柔軟な国債買い入れ姿勢を継続するか否かも注目されます。ただ、国内物価上昇率の先行きの見通しを踏まえると(図表2)、マイナス金利解除後もゼロ金利政策が当面続く可能性は高く、日銀が市場との対話を十分に行えば、極端な長期金利上昇、株安、円高は回避できると思われます。

 

[図表2]消費者物価指数の見通し

 

 

(2023年10月19日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀金融政策の見通しを「YCC撤廃、マイナス金利解除」に変更。政策変更による「株安、円高」などのリスクは?【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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