(※写真はイメージです/PIXTA)

1840年に、イギリスが宣戦して始まった「アヘン戦争」。インドで生産させたアヘン(=麻薬)をイギリスが中国に密輸したことが発端ですが、なぜイギリスは麻薬の密輸に踏み切ったのでしょうか。また、なぜ戦争に発展したのでしょうか。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏が解説します。

アヘン戦争敗北で生活困窮…清朝打倒を目指した「太平天国」

ところで、清の政府はアヘン戦争の賠償金を増税でまかなったため、民衆の生活が圧迫されました。生活に困窮する民衆は様々な反乱を起こしましたが、不満の最大の受け皿となったのが、拝上帝会です。

 

キリスト教の影響をうけ、「イエスの弟」を自称する洪秀全[こうしゅうぜん]が立ち上げたこの組織が、広西省で蜂起。占領した南京を天京として、太平天国を建てました。

※ キリスト教のパンフレットに影響をうけた

 

「滅満興漢」を掲げて清朝打倒を目指し、辮髪[べんぱつ]を廃止します。またキリスト教の影響で男女平等を掲げ、漢人女性の風習で、女性の足を幼少時から強く縛って成長を妨げる纏足[てんそく]を禁止しました。目玉となった政策が、地主から奪った土地を男女平等に配分する天朝田畝[てんちょうでんぽ]制度でした。

 

最盛期には300万のメンバーを誇った太平天国ですが、上層部の権力抗争で次第に求心力を失っていきます。対する清朝は、大地主でもある漢人官僚が、自分の土地を守るために自腹で給料を払い、私兵集団郷勇を組織して太平天国と戦ったんです。

※ 土地を奪えなかった反乱軍は、天朝田畝制度を実施できず

 

また、列強もアロー戦争が終結すると常勝軍を組織して清を助けました(北京条約で開港された港を太平天国が占領しているので、さっさと平和を取り戻したかったんです)。こうして反乱は鎮められました

※ 洪秀全は南京陥落の前に病死

 

太平天国の鎮定後、アヘン&アロー戦争で英仏の強さを見せつけられた清は、やはりというか対抗近代化を模索しました。

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋
中国の専制と国民国家との関係 出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋

“中体西用”のスローガンのもと始まった「洋務運動」だったが…

「中体西用」のスローガンのもと、中国の伝統的な専制を維持したうえで西洋の科学技術を摂取する洋務運動が進められました。旗振り役になったのは、太平天国鎮圧に功があった曾国藩[そうこくはん]李鴻章[りこうしょう]ら漢人官僚です。

 

ポイントは、前漢の武帝以来、2000年も中国王朝の屋台骨を支えてきた儒学儒学的主従関係は、国民国家における「平等な国民」とは相いれませんし、周の封建制を理想として尊ぶ復古的な姿勢からは、現体制を改めるような思想は生まれません。従って、洋務運動では政治改革は手つかずでした。

※ いわば「理系」の要素を取り入れ「文系」の要素は手をつけず

 

ただ、伝統を維持することも大切な価値観ですから、「改革しないから清はダメダメなんだよな」と短絡的に考えるのは早計です。

 

 

平尾 雅規

河合塾

世界史科講師

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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