年金月額14万円の専業主婦、夫亡き後の受給額に絶句…月額6万円の子のない自営業妻「危機だ」【FPが解説】

年金月額14万円の専業主婦、夫亡き後の受給額に絶句…月額6万円の子のない自営業妻「危機だ」【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

近年話題となっている老後資金の問題。実際のところ、夫婦2人ならどうにかなるケースは多いのですが、配偶者が先立つと状況は一変します。会社員の妻と自営業の妻のケースを比較しつつ、実情を探ります。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「会社員の夫+専業主婦」=年金月額23万円の論拠

中高年世代の多くが懸念している「老後資金」の問題。病気や介護など、若いころにはなかった不安があるほか、それに伴う出費も心配です。

 

これを軽減するには、日頃から「ねんきん定期便」にしっかり目を通し、自身の将来の年金額を把握しておくことが大切です。そのうえで不足分を補えるよう、現役時代から資産形成を進めておくことが必要でしょう。

 

一般的な年金の受給額ですが、会社員の夫と専業主婦の妻の組み合わせの場合、夫の年金額がおよそ16万円、妻が6万円、合計で月額およそ22万~23万円になるといわれています。

 

なお、一般的な年金受給額の論拠ですが、夫は会社員の平均的な給与である月収34万円・年収550万円から算出しています。20~60歳までの40年間、この平均給与をもらっていた場合、厚生年金部分は10万円、国民年金を満額6万円支給だとすると、合計でおよそ16万円となります。それにプラス、専業主婦の妻の国民年金が満額6万円で、月額およそ22万~23万円となるとされています。

 

当然ですが、平均年収が550万円を下回っていれば、年金支給額はさらに低くなります。また、年金からは社会保険料等が10~15%天引きされるため、実際の手取りはさらに少なくなるので注意が必要です。

専業主婦は「夫亡きあとの年金受給額」に要注意!

さらに注意が必要なのが、配偶者が亡くなると年金が減額されるという点です。

 

平均的な年金額を受給している夫婦のケースにおいて、万一妻が先に亡くなると、夫は自身の年金月16万円だけで生活することになります。どうにか生活はできるかもしれませんが、急病などの突発的な出費への対応については不安が残ります。

 

しかし問題は、夫が先に亡くなった場合です。「夫の厚生年金がもらえるでしょう?」とのんきに構えている方も多いのですが、現実はそう甘くありません。

 

夫が先に亡くなった場合、妻は確かに遺族厚生年金を受け取ることが可能です。しかし、妻が受け取れる額は夫が受け取っていた厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。単純計算で、妻が受け取れる年金の総額は、およそ月14万円程度になると想定されます。相談者の方にこの話をすると、専業主婦の妻の方は、しばしば絶句してしまいます。

 

夫が存命中は夫婦2人の年金で生活が回っていても、夫が亡くなったあとに生活費が不足して預貯金を取り崩し、存命中に底をついてしまう方も多いのです。

 

ただし、東京都では、生活保護の最低生活費の支給を受けることができます。生活扶助が約7万円、住宅扶助が約5万円です。どんなに生活が苦しくなっても、社会保障で守られていると覚えておきましょう。

 

生活のグレードダウンを行う第一選択肢として、手狭な物件への引っ越しがあげられますが、賃貸住宅への入居には連帯保証人が必要です。保証人が見つからなければ入居は困難ですし、そもそも賃貸アパートのオーナーは、孤独死のリスク懸念から「高齢者のおひとり様」との賃貸契約を嫌がる傾向があります。もし契約ができなければ、地方の田舎に移住するか、URの賃貸住宅に入るしかありません。

「自営業の夫+専業主婦」の場合は、さらに深刻

さらに状況が厳しいのは、夫が自営業の妻のケースです。

 

「自営業の夫+専業主婦」の場合、会社員の夫のケースとは異なり、それぞれの国民年金が満額支給されるとしても月額12万円に過ぎません。しかも、夫が亡くなったあとでも、18歳未満の子がいなければ「遺族基礎年金」はもらえません。つまり、高齢の夫亡きあとの妻の年金は、ほとんどのケースにおいて、月6万円のみなのです。ここが、夫が会社員の妻との大きな差です。

 

遺族基礎年金の受給対象者は、原則として「18歳未満の子のある配偶者」または「18歳未満の子ども」です。18歳未満の子どもがいなければ、自営業の夫が亡くなっても、遺族基礎年金はもらえません。

 

「知識としては知っていましたし、サラリーマンの配偶者との違いは理解しているつもりでしたが、改めて現実を目の前に突きつけられると、本当に最悪。危機的状況です」

 

ある自営業者の妻の方はこのように嘆いています。

 

夫が会社員なのか自営業者なのかによって、夫を亡くした妻の年金は大きく異なってきます。年金で暮らせなければ、生活保護を受けるしかないでしょう。

こうなったら「死ぬまで働く」と腹をくくるしか…

ここまで最悪のケースについて解説してきましたが、結論として、老後生活を維持するためには、できる限り働き続けるのが最善の方法だといえます。

 

最近では高齢者の就労環境の整備が進んでいます。プラス、年金の繰下げ受給をおこない、毎月の年金額を増やすようにすればなお安心です。75歳まで受給開始を繰り下げることができれば、65歳でもらう年金額の1.8倍が、毎月もらえるようになります。

 

私たち日本人の老後は非常に厳しい状況にあります。「命はあるが、お金がない」という最悪の状況を回避するためにも、資産形成はもちろん、仕事の継続が何より重要になるといえます。

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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