(※画像はイメージです/PIXTA)

9月7日、公正取引委員会は、「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を改定しました。いわゆる「1円スマホ」に代表されるスマホ端末の極端な値引き販売に対し、事実上ストップをかける内容となっています。問題視されている点と、指針の改定のポイント、中身、法的拘束力について、本記事で解説します。

改定指針の「規制内容」とは

以上を踏まえ、今回の改定指針の内容はどのようなものかみてみましょう。以下の2つです。

 

・回線契約との「セット販売」におけるスマホ端末の値引きの制約

 

・大手キャリアと販売代理店の関係の規律

 

◆回線契約との「セット販売」におけるスマホ端末の値引きの制約

まず、スマホ端末と回線契約との「セット販売」において、「端末設備の供給(販売)に要する費用を著しく下回る対価で当該端末設備を販売すること」が独占禁止法・電気通信事業法で問題となる「私的独占、不当廉売等」にあたると明記しました。

 

つまり、スマホ端末を「1円」などのあまりに安すぎる価格で販売してはならないということです。

 

◆大手キャリアと販売代理店の関係の規律

次に、大手キャリアと販売代理店の関係の規律です。大手キャリアによる以下の2つの行為が、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」にあたることを明記しました。

 

(1)販売代理店に対し、販売代理店が赤字になることがわかっているにもかかわらず、スマホ端末の大幅な値引き販売をさせるよう仕向けること

 

(2)販売代理店に対し、通常の営業活動では達成できないようなノルマを設定することにより、スマホ端末の大幅な値引き販売をせざるをえないように仕向けること

 

これにより、今後は「1円スマホ」の販売は事実上不可能になるものとみられます。

改定指針の法的拘束力と妥当性は?弁護士に聞く

今回の改定指針の法的拘束力はどうなっているのでしょうか。また、規制内容は妥当なものでしょうか。独占禁止法に詳しい弁護士・荒川香遥氏(弁護士法人ダーウィン法律事務所 代表)に話を聞きました。

 

【弁護士・荒川香遥氏の話】

「まず、指針の法的性質については、公正取引委員会が独占禁止法等の法令の執行を行う際の『行政指導指針』にあたります。法令つまり『法律』や『命令』と異なり、法的拘束力はありません。

 

しかし、行政指導指針は、法の解釈の統一性をはかるものです。つまり、法令というものは、一般的・抽象的に定めることになるので、個々の公務員ごとに解釈が違ってしまうと、法の適用が不公平・不公正になります。行政指導指針はそれを防ぐのに必要なものです。したがって、事実上、法令に準じる通用力をもつことがあります。従わなければ、結局、法令違反と扱われることになるでしょう。

 

大手キャリアと販売代理店は、経営体力の面でも、値引きにつながる様々なオプションを持っているという点でも、他の事業者と比べて有利な立場にあるのは間違いありません。値引き販売は、他の事業者の競争力を奪うことになります。

 

しかも、『1円スマホ』は消費者にとって一見、お得なように見えますが、値引きされた分のコストは結局、通信料金に転嫁されることになります。そうなると、通信料金が下がらず、消費者のためになりません。

 

したがって、今回の指針改定は、独占禁止法の理念に則ったものだといえます。」

 

「1円スマホ」のしくみは、価格が安いのには、必ず「裏」があることを教えてくれます。もしも、商品・サービスが「安すぎる」と感じたら、裏にはどのような事情があるのか、様々な観点から考えてみる必要がありそうです。

 

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