宿泊旅行統計調査2023年7月~日本人延べ宿泊者数が全体を押し上げ、延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を回復~

宿泊旅行統計調査2023年7月~日本人延べ宿泊者数が全体を押し上げ、延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を回復~
(写真はイメージです/PIXTA)

観光庁の宿泊旅行統計調査によると、23年7月の延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を上回りました。外国人の宿泊者数も5カ月連続でマイナス幅を縮小しており、引き続き回復が見込まれています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の安田拓斗氏が宿泊旅行統計調査の結果について解説します。

参考

観光立国へ向けた政府の目標と足もとの実績

政府は2023年3月31日に「観光立国推進基本計画」を閣議決定した。この基本計画では、観光立国の持続可能な形での復活に向け、「持続可能な観光」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」の3つをキーワードに、持続可能な観光地域づくり、インバウンド回復、国内交流拡大の3つの戦略に取り組むこととしている。計画期間は2025年までの3年間で、インバウンドや国内旅行について目標を掲げている。

 

訪日外国人旅行消費額の目標は5兆円、2023年1-6月期の実績は2.2兆円となっている。2023年4-6月期には2019年比▲4.9%と大幅に回復しており、目標達成は2023年中となる可能性が高い。
 

訪日外国人旅行消費額単価は、目標の20万円をすでに超えており、2022年は23.5万円、2023年1-6月期は20.7万円となっている。しかし、これはコロナ禍で短期滞在の観光客の割合が低下し、ビジネス、留学など長期滞在の割合が上昇したことが原因だと考えられ、今後外国人観光客数が増加するに伴って単価は低下することが予想される。ただし円安による押し上げ効果は引き続き残る。

 

訪日外国人旅行者数は2025年までに2019年の実績である3188万人を超えることを目標としている。2023年1-6月期の訪日外国人旅行者数は1071万人となり、目標達成は2024年となりそうだ。
 

訪日外国人旅行消費額および訪日外国人旅行者数は、2023年8月10日に中国政府が日本への団体旅行を解禁したことで今後、さらに増加していくことが予想される。また現在の円安の為替レートはインバウンドにとって追い風となるだろう。
 

インバウンド需要が急回復する一方で、アウトバウンドは回復が遅れている。日本人の海外旅行者数は2025年に2008万人とすることが目標だが、2023年1-6月期の実績は361万人に留まる。円安やインフレが原因の一つだと考えられる。

 

政府は、2023年3月15日にアウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージを策定した。この中で発表された方針では、2国家・地域間での海外旅行者数の設定など覚書の締結の推進や、戦略的・効果的な取組のためのマーケティング調査、安全情報の発信の強化などによって、日本人の海外旅行者数を積極的に増やしていくとされた。
 

国内旅行消費額は、早期に20兆円、2025年に22兆円とすることを目標にしている。全国旅行支援など政策の後押しを受けて、2022年は17.2兆円、2023年1-6月期は9.9兆円と順調に回復している。このペースを維持することができれば、2023年中に早期目標の20兆円を達成する可能性が高まる。

 

しかし、全国旅行支援を終了する都道府県が増加しており、2025年の目標を達成するためには、同政策終了後においても国内旅行消費額を増加させるための制度拡充、人手確保など官民双方の努力が必要だろう。

 

 

水際対策の変遷

日本のインバウンド需要が急回復を始めたのは、2022年10月11日に水際対策が緩和されたためである。それまでは、入国前に滞在していた国・地域を色によって区分し、地域によっては、出発前の検査、到着時の検査を実施した上で3日間の待機を課していた。
 

2022年10月11日には、それまで禁止していた個人旅行の解禁、一日当たりの入国者数の上限の撤廃、短期ビザ免除の再開など、水際対策が緩和され、ワクチン接種が完了していれば、検査・待機なしで入国できるようになった。
 

2022年の年末にはゼロコロナ政策を撤廃した中国で感染者が急増したことで、中国からの入国者に対して入国規制を強化したが、2023年3月にはそれを緩和し、4月には他の国・地域からの入国と同等の措置となった。
 

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ引き下げられる直前の2023年4月29日に水際対策は撤廃され、コロナ禍前と同じように入国できるようになった。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年9月1日に公開したレポートを転載したものです。

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