(※画像はイメージです/PIXTA)

ガソリン代高騰が続いているのを受け、2023年8月30日、政府・与党が、9月に期限を迎える「燃料油価格激変緩和補助金」を10月以降も延長する方向で調整に入りました。一方、鈴木財務大臣は8月29日に、ガソリン1リットルあたり53.8円の「ガソリン税」を引き下げる「トリガー条項」の発動を否定しました。トリガー条項とは何か、なぜ発動させられないのか、解説します。

ガソリン税「1リットル53.8円」は約50年続く「特例税率」

「トリガー条項」が発動した場合のガソリン税額「1リットル28.7円」は、「本則税率」といわれます。これに対し、現在の「1リットル53.8円」は「特例税率」といわれます。1974年から適用されています。

 

ややこしいのですが、制度上は「1リットル28.7円」が本来の姿で、「1リットル53.8円」が特例ということになります。しかし、実際には、特例措置の「1リットル53.8円」の状態が50年近く続いていることになります。

 

「1リットル53.8円」の特例税率は2010年以前は「暫定税率」といわれていたものです。1974年に「1リットル53.8円」の「暫定税率」が適用され、それが現在まで引き継がれています。1974年当時、暫定税率が導入された理由は、道路整備の財源が不足しているのでその財源に充てなければならないというものでした。

 

なお、ガソリン税は当時、自動車重量税とともに、使い道が道路の整備・維持管理に限られる「道路特定財源」の一つでした。その後、ガソリン税は2009年以降、使い道に制限のない「一般財源」へと移行されました。そして、トリガー条項は2010年、ガソリン税の高騰を抑えるしくみの一つとして設けられたものです。

 

このように、ガソリン税とトリガー条項をめぐっては、複雑な歴史的経緯があります。

ガソリン税を「下げられない」事情

ではなぜ、鈴木財務大臣はトリガー条項の発動に否定的な立場をとっているのでしょうか。

 

実は、政府はガソリン価格の高騰が始まった当初、「トリガー条項」の発動を検討していました。しかし、ガソリン税が国・地方自治体の両方にとって貴重な税収になっていることに配慮し、発動しないことにしたのです。そして結局、一時的な「補助金」で対処することになりました。

 

財務省の資料「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税(国税)の概要」によれば、ガソリン税の税収は、2023年度予算では2兆2,129億円(揮発油税1兆9,990億円、地方揮発油税2,139億円)となることが見込まれています。また、2022年2月に当時の金子総務大臣が、「トリガー条項」を発動した場合、地方自治体の税収が1年間で約5,000億円減少するという試算結果を明らかにしています。

 

このように、ガソリン税は国にとっても地方にとっても、貴重な税収であり、トリガー条項が発動することにより、それが大幅に減ることは避けられないといえます。

 

しかし、10月以降、補助金でいつまで対応できるかは未知数です。補助金の制度は一時的・時限的な性格が強いものであり、かつ、特定の事業者を優遇する側面があるので、どこまで続けられるのかという問題があります。また、物価上昇が続くなか、ガソリン税の制度を今後どうするのかが、重大な政策課題となっていく可能性があります。

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧