(写真はイメージです/PIXTA)

マレーシアの23年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比2.9%増。3.3%増としていた市場予想を下回る結果となりました。本稿ではニッセイ基礎研究所の斎藤誠氏が、4-6月期のマレーシアのGDP評価と先行きについて解説します。

4-6月期GDPの評価と先行きのポイント

マレーシア経済は2023年4-6月期の成長率が前年同期比+2.9%となり、1-3月期の同+5.6%から更に減速、約2年ぶりの低成長となった。

 

昨年はコロナ禍からの経済活動の正常化が進む中、通年の成長率が前年比+8.7%(2021年:同+3.1%)と大きく上昇したが、現在はペントアップ需要の押し上げ効果が薄れるなかで前年同期の高いベース効果の影響を受けて景気が減速傾向にある。


4-6月期の景気減速は外需の更なる悪化が主因となった。まず財貨輸出(同▲9.4%)は海外需要の低迷により電気・電子産業をはじめとする輸出志向の製造業が振るわず減少幅が拡大した。


民間消費(同+4.3%)は底堅い伸びを保ったが、前年同期のベース効果により増勢が鈍化した。

 

もっとも、マレーシアの消費を巡る環境は改善している。昨年からの一連のコロナ規制の緩和により観光関連産業が回復しており、2023年6月の雇用者数が前年同月比3.4%増の1,631万人、失業率が3.4%と前年同月の3.8%から低下するなど雇用環境は改善(図表3)、また4-6月期の消費者物価上昇率が前年同期比+2.8%(1-3月期の同+3.6%)となりインフレ圧力は後退している。


一方、サービス輸出(同+41.4%)は大幅な増加が続いた。マレーシアは昨年4月以降、入国規制を段階的に緩和しており、インバウンド需要がサービス輸出を押し上げている。今年3月の国内空港利用者数をみると、国内線がコロナ禍前の約9割まで、国際線も約8割まで持ち直してきている(図表4)。
 

また総固定資本形成(同+5.5%)と加速した。外需の悪化や昨年からの金融引き締め策による借入コストの上昇など投資環境は悪化しているが、複数年にわたる投資プロジェクトの継続的な実施により設備投資(同+4.4%)が持ち直し、建設投資(同+6.0%)も堅調に推移した。

 

 

マレーシア経済は前年同期の高いベース効果の影響により当面は低成長が続きそうだ。また中国の景気回復ペースが鈍化するなど世界経済の減速により財貨輸出の低迷が予想されるほか、マレーシアの金融引き締め策も内需の足かせになるとみられる。

 

マレーシア中銀は国内経済の底堅さを背景に今年5月に追加利上げを実施して、政策金利がコロナ禍前と同水準の3%に回復している。

 

もっともインフレ圧力の後退や観光業を中心とするサービス業の回復、良好な労働市場環境、大型インフラ整備計画の継続的な実施などは引き続き景気の下支えとなるだろう。内需の底堅い成長により大幅な景気減速は回避される見通しだ。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月18日に公開したレポートを転載したものです。

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