(※画像はイメージです/PIXTA)

政府は、ガソリン価格の高騰が続いていることを受け、2023年9月に期限を迎える「燃料油価格激変緩和補助金」を10月以降も延長する方針を固めました。他方で、ガソリン価格には1リットルあたり53.8円徴収されている「ガソリン税」を引き下げる動きはみられません。その背景には複雑な歴史的経緯と事情があります。本記事で解説します。

価格高騰を抑える「トリガー条項」は発動されず…

上述の2010年の法改正の際、同時に導入されたのが、「トリガー条項」です。これは、3ヵ月連続で平均小売価格が1リットル160円を超えた場合に、特例税率の適用を停止する(本則税率の1リットル28.7円が適用される)というものです。

 

現在の状況は、本来なら、この「トリガー条項」が発動する場面です。しかし、実際にはトリガー条項はこれまで一度も発動されたことがありません。その大きな要因は、2011年3月に発生した東日本大震災です。復興のための財源を確保するために、特別法によって、トリガー条項が凍結されることになったのです(「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」44条参照)。

 

このように、ガソリン税が「1リットル53.8円」である理由は、「特例税率」が適用されていることと、高騰を抑えるための「トリガー条項」が凍結されていることにあります。

ガソリン税を「下げられない」事情

政府は、原油価格が高騰していた当初、「トリガー条項」の凍結を解除し、発動させることも検討していました。しかし、結局、一時的な「補助金」で対処することを選びました。その背景には、ガソリン税が国の貴重な税収の一つとなっていることがあります。

 

財務省の資料によれば、ガソリン税の税収は、2023年度予算では2兆2,129億円(揮発油税1兆9,990億円、地方揮発油税2,139億円)と見込まれています(「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税(国税)の概要」参照)。

 

2022年2月に金子総務大臣(当時)が明らかにしたところによれば、「トリガー条項」を発動した場合、地方自治体の税収が1年間で約5,000億円減少するという試算がなされています。

 

政府は10月以降、ガソリン価格の高騰に対し、当面は補助金の延長で対応することが想定されます。しかし、補助金はあくまでもその性質上、一時的な救済措置にすぎません。今後、ガソリン価格の30%超を占めているガソリン税とトリガー条項のあり方が、改めて問い直される可能性が考えられます。

 

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