〈実話〉「これから本格的にいじめてやる」同僚の女性社員7名から壮絶ないじめ…“同僚相手”でも「パワハラ」に該当するのか?【裁判所が下した判断】

〈実話〉「これから本格的にいじめてやる」同僚の女性社員7名から壮絶ないじめ…“同僚相手”でも「パワハラ」に該当するのか?【裁判所が下した判断】
画像:PIXTA

法改正に伴い、近年企業における「パワハラ」はより厳格に取り締まられるようになってきました。本連載は、弁護士である山浦美紀氏の著書『パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-』(新日本法規出版)より、一部抜粋して紹介。実際の現場で起こり得る企業のグレーゾーンな事例を取り上げながら、弁護士が分かりやすく解説します。

同僚に、冗談のつもりで

同僚間でしている罰ゲームとして、ミスが続いた同僚の顔写真付ポスターを作成し、職場に掲げた。

 

ミスが続く同僚がいるので、他の同僚たちと罰ゲームを考え、冗談のつもりで「この者とは一緒に仕事をしたくありません」という標語を記載したミスの続く同僚の顔写真付きのポスターを作成し、皆の目に入るよう職場に掲示したのですが、同僚相手でもパワハラに該当するのでしょうか。

同僚間のパワハラ?…専門家の見解は

パワハラの定義の「優越的な関係」は、上司部下といった上下関係だけではなく、同僚間のいじめのような関係であっても、これに該当します。さらに、「この者とは一緒に仕事をしたくありません」という標語を記載した顔写真付きのポスターを掲示する行為は、措置義務の対象となるパワハラに該当します。

同僚間のパワハラ

パワハラの典型は、「上司」から「部下」に対して行われるものです。しかし、パワハラ指針2(4)では、パワハラの定義である「優越的な関係を背景とした」とは、上司部下の関係に限らず、「当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」を背景として行われるものを指しています。

 

「例えば」として以下の3つが例示されています。

 

・職務上の地位が上位の者による言動

 

・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの

 

・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

 

具体的には、先輩後輩間のパワハラ、正社員から非正規社員へのパワハラ、同僚間のパワハラ、そして、部下から上司へのパワハラもあり得ます。

 

部下から上司へのパワハラは想起しにくいですが、例えば、部下の方が上司より、IT業務に対して豊富な知識や経験を有していて、部下の協力がないと円滑な業務遂行ができないといったケースが考えられます。

 

他方で、同僚間のパワハラは、集団でのいじめ・無視といったことが考えられます。

 

同僚間のパワハラに関する裁判例としては、国・京都下労基署長(富士通)事件(大阪地判平22・6・23労判1019・75)があります。同僚の女性社員7名によるいじめや嫌がらせが問題となった事案です。

 

毎日のようにSNSメッセージを使って悪口を送信したり、「これから本格的にいじめてやる」と言ったりしたことについて、判示では、「個人が個別に行ったものではなく、集団でなされたものであって、しかも、かなりの長期間、継続してなされたものであり、その態様もはなはだ陰湿であった。」「その陰湿さ及び執拗さの程度において、常軌を逸した悪質なひどいいじめ、いやがらせというべきものであって、それによって原告が受けた心理的負荷の程度は強度であるといわざるをえない」と判断されました。

 

したがって、本事例のような同僚間のいじめのケースも、パワハラの定義にいう「優越的な関係を背景とした」に該当します。

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パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-

パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-

山浦 美紀

新日本法規出版

その行為はパワハラ?! 判断に迷う事例をわかりやすく解説! ◆パワハラか否か・・・誤認しがちな行為を6つの類型に分類し、具体的な事例を掲げて解説しています。 ◆多数の裁判例やパワハラ指針、パワハラ運用通達等を参…

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