(写真はイメージです/PIXTA)

住宅市場では価格上昇が続いていますが、23年4-6月の新設住宅着工戸数と首都圏のマンション新規発売戸数、中古マンション成約件数はいずれも減少しました。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、国内不動産市場の最新動向について解説します。

3. 不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると、2023年6月の東京都心5区の空室率は6.48%(前月比+0.32%)、平均募集賃料(月坪)は35カ月連続下落の19,838円(前月比▲0.2%)となった。新築ビルの空室率が34.42%(前月比+6.81%)と上昇するなか、新規供給の増加を受けて賃料の下落圧力が続いている。

 

他の主要都市をみると、建て替えによるオフィス床面積の減少などによって札幌の空室率が低位(2.18%)で推移する一方、大阪・名古屋・仙台が5%台、横浜と福岡が新規供給の影響から6%台に上昇するなど都市間によって空室率の水準に差が生じている(図表-9)。また、募集賃料は仙台と大阪が概ね横ばい、札幌・横浜・名古屋・福岡は前年比プラスとなっている3

 

 

三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2023年第2四半期の東京都心部Aクラスビル賃料(月坪)は25,655円(前期比▲6.6%)に下落し、空室率は5.9%(前期比+1.2%)に上昇した(図表-10)。三幸エステートは、「既存のAクラスビルでは空室消化が進むものの、建築中ビルは依然としてテナント誘致に時間を要する傾向にある」としている。

 

日経不動産マーケット情報(2023年8月号)によると、「東京の賃貸オフィス市場では移転需要が回復傾向にあり、賃料に下げ止まり感がみられる。しかし、今後は2次空室の発生も予想されるため、真に下げ止まったと判断するには、もう少し先を見る必要がある」と指摘している。

 

 

 


3 2023年6月時点の平均募集賃料は、前年同月比で、札幌(+3.1%)・仙台(▲0.2%)・東京(▲2.1%)・横浜(+0.5%)・名古屋(+0.9%)・大阪・(▲0.1%)・福岡(+1.1%)となっている。

 

(2) 賃貸マンション

東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプが前年比でプラスとなった。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2023年第1四半期は前年比でシングルタイプが+1.7%、コンパクトタイプが+1.1%、ファミリータイプが+5.0%となった(図表-11)。

 

 

総務省によると、東京23区の転入超過数(2023年1-6月累計)は+47,783人(前年同期比+77%、2019年同期比▲10%)となった(図表-12)。年後半も転入超過のトレンドを維持できるかどうか、注目される。

 

 

(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、インバウンド消費が好調な百貨店を中心に売上が回復している。商業動態統計などによると、2023年4-6月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が+7.5%、コンビニエンスストアが+4.5%、スーパーが+2.9%となった(図表-13)。6月単月では、百貨店が+7.2%(16カ月連続プラス)、コンビニエンスストアが+3.2%(16カ月連続プラス)、スーパーが+2.9%(9カ月連続プラス)となっている。

 

ホテル市場は、日本人の宿泊需要にやや頭打ち感がみられるものの、インバウンドの宿泊需要が順調な回復を示している。宿泊旅行統計調査によると、2023年4-6月累計の延べ宿泊者数は2019年対比で▲4.6%の水準まで回復し、このうち日本人が▲3.4%、外国人が▲9.4%となった(図表-14)。また、STR社によると、6月のホテルRevPARは2019年対比で全国が+5.3%、東京が+14.3%、大阪が▲5.6%となった。

 

 

物流賃貸市場は、首都圏では新規供給の影響を受けて空室率が高止まりしている。シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2023年6月末)は8.2%(前期比±0%)となった(図表-15)。

 

今期は新規需要が過去最大の22.5万坪を記録したものの、新規供給(24.4万坪)も多く、前期比で横ばいとなった。既存物件の空室消化も進んでいるものの、空室が多いなかで、テナントは引き続き選別的となっており、物件やエリアの2極化が進んでいるとのことである。近畿圏の空室率は3.2%(前期比▲1.4%)に低下した。
 

また、一五不動産情報サービスによると、2023年4月の東京圏の募集賃料は4,600円/月坪(前期比+2.0%)に上昇した。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月9日に公開したレポートを転載したものです。

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