(※写真はイメージです/PIXTA)

いまの人生を豊かにするため、そして将来の資産形成のため、「収入アップ」は会社員の喫緊の課題だ。実現するには複数の選択肢があるが、一番現実的な方法は、社内で出世する方法だろう。だが、出世を果たしても、希望通りの結果にならないケースもあるようだ。実情を見ていく。

「転職」は給料を増やすための選択肢、わかってはいるが…

少子高齢化が急速に進み、社会保障制度が頼れなくなった現在の日本。景気は30年以上低迷したまま、そこにインフレが重なれば、将来に明るさは見出しにくい。年齢・性別にかかわらず、自分の将来を守るため、まずやるべき喫緊の課題が「資産形成」となるのも無理からぬことだといえる。

 

現役世代であれば、まずは少しでも給与を増やすことが重要だ。少しでもいい給与をもらえる会社に転職するのは、有効な手段だといえる。

 

総務省『労働力調査』(2022年平均)によると、15歳以上の就業者は6,713万人。そのうち転職者(現在就業者である者のうち、前職があり、過去1年間に離職を経験した者)は303万人で、転職者率は4.5%。過去5年間の転職者率をみると、2018年4.9%、2019年5.2%、2020年4.8%、2021年4.3%と、50人規模の会社なら、だいたい2~3人が転職者となっている。

 

また転職希望者は968万人で、全就業者の14.4%となっている。つまり、就業者の7人に1人は転職を検討しているということになる。

 

雇用形態別では、正社員3,588万人のうち転職希望者は527万人で全体の14.7%だが、非正規社員2,101万人のうち、転職希望者は394万人で全体の18.8%となっている。正社員に比べて低収入の傾向にある非正規社員は、正社員への転職希望が多いことが推察される。

 

ただ、年齢が上がるほど転職者率は下落傾向であり、転職希望者率もまた、年齢を重ねるごとに減少傾向となっている。一般的に、キャリアを積むほど経験者採用が増え、転職の難易度が上がることになるが、転職市場もそれを如実に反映した結果となっているといえる。

 

◆年齢別「転職者と転職希望者」

 

15~24歳:50万人(9.2%) / 96万人(17.7%)

25~34歳:75万人(6.8%) / 248万人(22.4%)

35~44歳:56万人(4.3%) / 226万人(17.2%)

45~54歳:54万人(3.3%) / 228万人(13.9%)

55~64歳:45万人(3.7%) / 118万人(9.8%)

65歳以上:21万人(2.3%) / 52万人(5.7%)

 

※ 数値:左より転職者数(転職者率)/転職希望者数(転職希望者率)

※ 出所:総務省『労働力調査』(2022年平均)より算出

「部長の椅子が回ってきた、超ラッキー!!」喜びもつかの間

上述の内容から、転職希望者はおよそ7人に1人いるのに対し、実際に転職を果たすのは50人に2~3人程度に過ぎないことがわかる。転職するのはそれなりに難易度が高く、また、希望通りの結果を得るのはさらに難しい。

 

転職がむずかしければ、勤務先での給与アップを目指すしかない。そのためには仕事で実績を上げ、「出世する」ことだ。

 

厚生労働省の調査によると、非役職者の会社員(平均年齢41.1歳)の平均給与は月収で28.1万円、年収で451.2万円だ。係長クラス(平均年齢45.4歳)なら、月収36.9万円、年収626万円。課長クラス(平均年齢48.8歳)なら、月収48.6万円、年収783.7万円。そして部長クラス(平均年齢52.7歳)は、月収58.6万円、年収913.3万円となっている。

 

非役職者の50代前半の給与は月収で30.9万円、年収で500.9万円。同期で部長の給与は、月収で1.8倍、年収で2.0倍だ。出世して役が付けば、相当な収入アップになるといえる。

 

ただ、出世を目指したところで、思い描いていた結果にならないというケースもあるため、注意が必要だ。

 

都内の中小企業に勤務する40代後半の山田さん(仮名)は、がっくりと肩を落とす。

 

「大学卒業後、ずっと非正規で転々としていましたが、20代後半になって、ようやく正社員としてこの会社に転職しました。とはいえ、最初からかなり給料が低く、課長になれたのも最近です。昇給もごくわずかでした。まあ、社内からは〈部長になれば違うよ〉と聞いていたのですが…」

 

生え抜き社員でないため、このまま万年課長で終わるかと思いきや、上司だった年下の部長が友人と一緒に会社を興すため、退職することに。いよいよ山田さんに部長の椅子が回ってきた。

 

「本当にラッキーだと思いましたよ。退職する部長からは〈みんなのこと、よろしく頼むね〉と笑顔でねぎらわれ…。昔の仲間も喜んでくれて、僕のおごりで飲み明かしました」

 

その後、部長に昇格することが決まった山田さんは人事部と面談した。

 

「そりゃあ、期待しました。ですが、話を聞いてびっくりですよ。たった3万円の昇給。手取りでおよそ23万円です」

 

〈それまでの手取りは20万円ぐらいだったのですか?〉との質問に、山田さんは黙ってうなずいた。

「部長=高給取り」のイメージを覆す、恐るべき薄給待遇も

役職ごとの給与分布だが、係長の月収の中央値は35.2万円、課長で45.7万円、部長で54.1万円。部長クラスの給与分布に注目すると、上位10%で月収は65.67万円。月収100万円超えは5.3%と、部長20人に1人の水準。

 

一方、部長でありながら月収30万円、手取りで23万~24万円程度に満たないケースが4.5%。部長20~25人に1人という水準だ。

 

◆部長/課長/係長の給与分布

 

20万円未満:0.5% / 0.5% / 1.4%

20万~30万円未満:4.0% / 6.5% / 22.8%

30万~40万円未満:12.7% / 24.92% / 45.4%

40万~50万円未満:23.3% / 30.3% / 21.4%

50万~60万円未満:21.0% / 18.9% / 6.2%

60万~70万円未満:16.0% / 10.3% / 1.8%

70万~80万円未満:9.3% / 4.3% / 0.6%

80万~90万円未満:4.8% / 2.1% / 0.2%

90万~100万円未満:3.3% / 0.9% / 0.2%

100万円以上:5.3% / 1.4% / 0.1%

 

※ 数値は左より、部長級/課長級/係長級

※ 出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より算出

 

一般的には「部長=高給取り」のイメージだが、思わず目を疑う「薄給」なケースもあるのだ。

 

「退職した部長に、給与額を聞ければよかったのですが…」

 

山田さんはうつむくが、そのような話を実際に聞くのは容易ではないだろう。また、部長が山田さんと同じような給料だったかどうかも、いまとなってはわからないのだ。

 

サラリーマンとして、もしも「どう頑張っても低収入」の可能性が高いのであれば、いまのポジションにこだわらず、もっと給料をもらえる可能性があるところへ転職を検討したほうがいいのではないだろうか。

 

 

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