(※写真はイメージです/PIXTA)

「老老介護」や「遠距離介護」の問題が深刻な日本。家庭内で介護を完結させることは至難の業です。ただ、有料老人ホームなどの施設を頼ろうにも、介護に必要な期間や費用が分からないという理由から、利用を避けている人は少なくありません。そこで、両親の介護を施設に頼ったedamameさん(仮名・61歳)とチーザさん(仮名・61歳)の「介護体験談」をみていきましょう。※本記事は、上大岡トメ氏による著書『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(主婦の友社)より一部を抜粋・再編集したものです。本記事内の情報は、2021年4月時点のデータに基づいています。

9年の介護生活も、“なるべくプロ任せ”で優しくなれた

【edamameさん(61歳)】

埼玉県在住。母は介護保険が始まって間もない2001年に体調を崩して要介護認定を受けた。2008年に両親は介護つき有料老人ホームに入居。母は3カ月後に80歳で、父は2年後に84歳で他界。

 

毎週末、車で通いつづけた7年間

母が体調をくずし始めたのは、介護保険が始まって間もない2001年のこと。帯状疱疹の悪化から重い神経痛を発症、さらに老人性うつ、軽い認知症と変化していった。面倒見のよかった母が、無表情・無関心になっていくのは悲しかった。

 

当時の介護保険はまだサービスの規定がゆるやかで、要介護認定を受けていなかった父のケアも多少はしてもらえた。そのうち父も要支援となり、介護保険でまかなえない部分はシルバー人材センターの元看護師さんに依頼。母はヘルパーさん、父はシルバーさんというように、横のつながりをとりながら分担してもらえた。

 

私は車で1時間ほどの場所に住んでいたので、土日のどちらかは必ず実家に顔を出すようにしていた。そうじや料理はヘルパーさんにおまかせし、私は両親が喜びそうなお惣菜やお菓子を届ける担当。

 

本音を言えば、夫婦2人暮らしの限界に気づいてほしかったので、あまり手は出さないようにしていた。それでも7年近く毎週実家に通うことは精神的に負担だった。同居は考えていなかったので、このくらいは……という気持ちもあった。

 

そんななか、私の住むマンションから徒歩5分の場所に介護つき有料老人ホームがオープン。夫婦部屋があると知って「これだ!」と思った。が、父は断固拒否。どうも病院のような場所を想像したらしい。マンション風の2DKの部屋と大浴室を見学したら、すぐに気に入ってくれた。

 

ホームに入居して穏やかな日々に

もともと父は家事がいっさいできず、娘や親戚、ヘルパーさんへの依存度が高いタイプ。母が亡くなったあともホームで穏やかに生活してくれた。入居一時金は1,000万円以上、月々の支払いは25万円。すべて父の貯蓄と年金でまかなうことができたので助かった。また、母は入居後3カ月、父は2年で亡くなり、返金も多かった。

 

振り返ると、両親の介護を通して多くを学ばせてもらった。「老いていくことのむなしさ、さびしさ」を目の当たりにするとともに、人は支えられて生きているということも実感できた。私たち夫婦は子どもがいないので、お互いの介護も考えて、夫婦でホームヘルパー2級の資格(現介護職員初任者研修のこと)も取得した。

 

現在親の介護をしている同世代の友人たちには、「あなたが心身ともに健康でいることがいちばん大事なんだよ」と伝えている。私の場合、週1で実家に通っていたときには親にキツく当たってしまうことが多かったが、親がホームに入居してからは優しくなれた気がする。あの2年間は、穏やかで思い出深い時間となった。

 

いま、両親の仏壇はわが家のリビングにある。いつも2人に見守られている気がして心強い。

 

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※本連載は、上大岡トメ氏による著書『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(主婦の友社)より一部を抜粋・再編集したものです。

マンガで解決 親の介護とお金が不安です

マンガで解決 親の介護とお金が不安です

著者:上大岡 トメ
監修:黒田 尚子

主婦の友社

ベストセラー『スッキリ』『キッパリ』を生んだ漫画家上大岡トメ氏が、超高齢社会&介護未体験ゾーンに突入! いま、なにをするべきなの? 上大岡氏の「親の介護とお金」の疑問を、介護問題にも詳しいファイナンシャルプラ…

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