(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍がオフィス市場に与えた影響は、世界金融危機に比べて小さいものでした。それにも関わらず、調整局面にあるオフィス市場の不透明感が解消できないのは、在宅勤務定着の結果、オフィス需要が構造的に低下するとの懸念が根強いためだと考えられます。本稿では、ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏が、オフィス市況の現状を分析します。

4―地方主要都市も東京と同じ構図へ:堅調だった地方主要都市にも逆風が強まる

今後、地方主要都市においても、東京と同様に、新築オフィスビルの供給が増加する。

 

コロナ禍における新規供給は、天神ビッグバンなどの建て替え促進策により供給量が急増した福岡を除き、全ての地方主要都市で、過去10年平均並みの水準となった(図9)。

 

過去10年平均は2010年から2019年を対象とし、地方主要都市では世界金融危機の傷跡が残り、供給が抑制された時期にあたる。

 

そのため、コロナ禍における供給量は総じて少なかったと言える。しかし、今後は大量供給が続く福岡に加えて、札幌や仙台、大阪においても供給増加が予想されている。

 

 

一部の地方主要都市では、東京と同様に、オフィス需要が低迷している。

 

2020年から2021年のネットアブソープションは、福岡を除くすべての都市で過去10年平均を大きく下回り、2022年は大阪と仙台ではオフィス需要の回復が見られたものの、札幌と名古屋では依然としてオフィス需要が弱い状態が続いている4(図10)。

 

地方主要都市における在宅勤務のオフィス市場への影響は、東京に比べ、比較的小さいとの見方が一般的である5。実際、地方主要都市では、在宅勤務の導入に伴い解約や縮小移転は目立たなかった。

 

しかしながら、低調なネットアブソープションは、一部の地方主要都市においても、在宅勤務の定着がオフィス需要の増加を抑制する要因として一定の影響を及ぼしていることが示唆される。

 

 


4 新築オフィスビルの供給は、需要を喚起し、ネットアブソープションを押し上げる傾向があるため、2022年に福岡と大阪でオフィス需要が強かった要員として供給が多かったことが挙げられる。

5 東京と地方主要都市のオフィス出社率の動向については、以下参照。

佐久間誠・松尾和史・堤盛人(2023)「コロナ禍におけるオフィス出社動向-携帯位置情報データによるオフィス出社率の分析」(基礎研レポート、ニッセイ基礎研究所、2023年5月25日)

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年7月4日に公開したレポートを転載したものです。

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