(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフストラテジスト・石山仁氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

市場のトレンドを10年ごとにみてみよう

■2020年代も3年半が経過しました。2020年代はコロナ禍から始まり、2023年はウィズコロナへと大きく転換してきました。足元の市場は、日本株がバブル後の高値を更新し、インド株が好調を持続するなど、注目に値する上昇を記録する市場もあります。今回はやや長い目で見て、2020年代の市場の主役は誰かを考えてみようと思います。まず最初に、1950年代から10年ごとに市場のトレンドをまとめてみました。

 

【図表】1950年代以降の市場からみた世界のトレンド

 

(1)1950年代:資本主義欧州再建(西ドイツの誕生)~年率29%の上昇

■第2次世界大戦後、欧州の課題は資本主義欧州の再建でした。中心はドイツで、48年6月にドイツマルクが登場し、49年9月に資本主義国西ドイツが誕生します。その後、西ドイツは輸出大国として発展しました。

 

(2)1960年代:好調な米国(好景気の持続と大型株への集中投資)~前半年率10%の上昇

■50年代から好調な米国株式市場は、66年まで大型株を中心に堅調に推移しました。60年代後半以降は、ベトナム戦争で膨らんだ債務を背景に物価が上昇し、69年12月に景気は後退局面入りとなりました。

 

(3)1970年代:コモディティ(地政学リスク、インフレと資源)~原油価格、金価格が大幅上昇

■中東情勢が極めて不安定となり、地政学リスクが高まりました。70年頃に1バレル2ドル前後だった原油価格は79年に40ドル超まで上昇しました。高インフレ下、金価格が原油価格をさらに上回る上昇を示しました。

 

(4)1980年代:日本の台頭(不動産と株式の高騰)~年率20%の上昇

■85年までの円高不況から一転し、大幅な金融緩和を背景に過剰流動性が発生し、86年から91年にかけて、不動産や株式が高騰しました。結果的にはバブルとなりましたが、当時は好景気と捉えられていました。

 

(5)1990年代:シリコン・バレー(IT革命)~年率24%の上昇

■95年8月に新規公開されたネットスケープ株の高騰でITブームに火が着きました。ベンチャー企業創業者が膨大な富を手にしたことから、シリコン・バレーを中心にベンチャー設立ブームとなります。

 

(6)2000年代:新興国市場(成長と人口)~ブラジルが年率15%、インドが同13%の上昇

■01年12月に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟。以後、新興国の高成長が注目されます。ひときわ成長が著しい国々として、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)が注目されました。

 

(7)2010年代:テクノロジー(GAFAM)~年率15%の上昇

■グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、メタの旧社名フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト(GAFAM)に代表されるテクノロジー企業が急成長しました。仕事や買い物の方法、情報の入手法、余暇の過ごし方などが激変しました。

2020年代以降のトレンドは?

■過去のトレンドは米国を主軸に資源、日本、新興国が埋めてきた、という構図です。50年代も欧州がトレンドでしたが、真の立役者は米国でした。日本や新興国がトレンドとなった年代も、米国の金融政策や消費拡大の恩恵を受けるなど米国が大きく影響してきました。今後も米国の影響を受けつつ、今の動きの延長がトレンド化するかが注目されると思います。

 

(1)期待されるトレンド1:米国主導で加速するデジタル・テクノロジー

■人工知能(AI)は2010年代に一大ブームを巻き起こしましたが、チャットGPTに代表される対話型AIの登場によって、ビジネスや教育の在り方が一気に変わり始めています。デジタル需要の飛躍的な拡大と米中対立を背景としたパワー半導体や高度技術の囲い込みなど、米国主導でテクノロジーの進化が加速するトレンドが2020年代と思われます。

 

(2)期待されるトレンド2:新興アジアの躍進が続く

■国連によれば、生産年齢人口は2030年にインドが最大になるとの予想です。また、労働生産性(1人当たりGDP)の伸び率(2028年と2020年の比較、年率、IMFベース)はインドが8.9%、ベトナムが8.6%、フィリピンが8.3%と中国の7.9%を上回っています。新興アジアは2020年代を通して高成長を維持すると期待されます。

 

(3)期待されるトレンド3:後戻りできない環境改善が新たな需要を生み出す

■世界的な環境改善が生み出す新たな需要も注目されます。例えば、産業廃棄物や医療廃棄物の処理です。こうした産業も含め、気候変動・環境関連ビジネスがトレンドとなる可能性があります。地球の温暖化を抑制する動きは後戻りできません。

 

(2023年7月6日)

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年代以降に注目される「市場のトレンド」3つ【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

石山 仁

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフストラテジスト

 

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