(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年4月に施行される「医師の働き方改革」を前に、「医師事務作業補助者」が、注目を集めています。さまざまな職種が「多職種協働」を行う医療機関において、柔軟に動ける存在が必要とされているのです。現代の人手不足の医療業界において、限られた人的リソースを使い、効率的なチーム医療を行うにはどうすればよいのでしょうか? 東京医療保健大学教授の瀬戸僚馬氏が解説します。

「もんじゃ焼き的分業」状態にある日本の医療現場

まずは医師事務作業補助者をとりまく環境の話から始めたいと思います。「チーム医療」に関する議論をみていると、あらかじめ役割や業務を分担し、個々の行為をどの職種が担うかが決められている「ピザ的分業」が前提になっているものが多くみられます。

 

たとえば、看護師はほかの職種の仕事を担わないし、薬剤師も看護師の業務に手を出さないといったかたちです。ひとたびカットラインを入れてしまうと、それぞれのピースがくっつくことのない「ピザ的分業」が想定されていることが多いのです。

 

ただ、特にアメリカなどの海外の医療機関における「ピザ的分業」を例にとった議論を見ていて感じるのは日本の医療機関とはまるでリソースが違っているということです。もともと人手不足の日本においてこうした議論は成り立たないと思われます。

 

では、日本の病院の現場は実際にどうなってるかというと、「もんじゃ焼き的分業」が行われていると筆者は考えています。関東人にしか通じない話題で恐縮なのですが、ゆるく小麦粉を水溶きしたあのローカルフードの場合、自分の食べる分をヘラでとっても物理的な切れ目がつかないのが特徴となっています。

 

病院の業務もどちらかというとこちらに近くて、もちろん厳格にどの職種が担務するものか明確に定められた行為もありますが、実際には「医師・看護師・事務職のいずれでもいい業務」みたいなものも数多く存在し、医療従事者間の業務の境界線が総じて緩い場合も多いのです。

 

だからこそ、この業務はどの職種がやるのが1番いいのかといった議論を一般化させることはできず、それぞれの病院にどんな人がいて、個々人の熱意やスキルも含めたところから、どの職種がやるのが1番といった判断になると思います。

 

もし病院全体の役割分担のなかで、既存職種がしっかりやっていて回っているのであればそれはそれでいいかもしれないし、逆に人が足りずに困っているような弱い部分があれば、医師事務作業補助者に入り込んでもらうように設計するなど、柔軟に考えることが大切ではないかと思われます。

 

(※写真はイメージです/PhotoAC)

「ピザ的分業」としてのチーム医療

厚生労働省医政局長が2010年(平成22年)4月30日に発出した「チーム医療通知」(医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について)というものがあります。

 

ここで事務職にとって大きな意味があったのは、「書類作成(診断書や主治医意見書等の作成)等の医療関係事務を処理する事務職員(医療クラーク)」を例に挙げて医療スタッフの一員として効果的に活用することが望まれる、としたことです。当時の行政文書上では医療クラークですが、「医師等の負担軽減を図る観点」から医師事務作業補助者の活用が重要だと示されました。

 

ただし、このころはまだ「ピザ的分業」の色彩が強く、通知の冒頭部分にも「多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提」と明記されています。このように高い専門性を前提として、そのうえで互いに連携補完するというやり方では、

 

「この仕事、誰がやってもいいんじゃないの?」

「もうちょっと柔軟にやったらいいんじゃないか?」

 

といった柔軟な発想がないなかで、医師事務作業補助者を配置してもそのポテンシャルが発揮できません。

 

※出所:筆者作成
[図表2]チーム医療という名の「ピザ的分業」 ※出所:筆者作成
 

では、その柔軟さとはどういうことかという話ですが、医師事務作業補助者の配置について参考になる具体例を1つ挙げたいと思います。

 

これは筆者の知るある病院の事例ですが、医師と医師事務作業補助者の役割分担関係のなかに救急救命士が混ざっています。これはなにをしてるかというと、救急救命士が診療報酬上は医師事務作業補助者として配置されていて、医師事務作業補助者の業務をしているのです。

 

救急救命士が医師事務作業補助者として診療録の代行入力などをしますが、やはり救命士ということもあり、状況判断に長けていますし、その本来の専門性は医師事務作業補助者としても活きてくることでしょう。

 

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