「逆ザヤ」を防ぎたい市中銀行
(補足すると)FRBと同様、市中銀行は保有資産の利回りが低いため、預金金利を大幅に引き上げると「逆ザヤ」に陥ってしまいます。逆ザヤを防ぐべく、預金金利を低くしているために、顧客預金が引き出され、(短期の金融商品で回すことで高金利をオファーしている)MMFにお金が流入しています。
そして、MMFは運用手段の一環として、FRBにリバース・レポとして「預け入れる」ために、結果として、市中銀行準備預金がリバース・レポに振り替わるという事態が生じています。
(本旨に戻ると)今後とも、量的引き締め(QT)に加え、銀行預金金利の低水準が続くと、市中銀行準備預金はさらにMMFなどに逃避して、早晩、銀行間金利にストレスが生じるリスクが考えられます。それは、金融市場全般にとっての悪材料です。
その際は、市中銀行準備預金の不足であるため、2019年秋のように、FRBは資金供給(=準備預金の発行)に転じるほかありません。ちなみに、ニューヨーク連銀は、準備預金残高・GDP比の「長期」水準を8%と仮定しています。
わからないのは、その時点で、①インフレ圧力が完全に収まり、②FRBが利下げに転じて(FRBの)逆ザヤが解消されているかどうかです。①インフレ圧力が収まらないうちに準備預金を発行することは金融緩和に当たりますし、②利下げできていないうちに準備預金を発行すると逆ザヤが拡大します。
どうしても複雑になってしまいます。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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