【70代・預金1億円超】「自分の死んだあとなんか、知るか!」相続対策への協力ゼロの夫…「だったら、いいこと考えた!」妻と子どもの、密かな計画

【70代・預金1億円超】「自分の死んだあとなんか、知るか!」相続対策への協力ゼロの夫…「だったら、いいこと考えた!」妻と子どもの、密かな計画
(※写真はイメージです/PIXTA)

70代の経営者夫婦は、紆余曲折ありながらも経営を軌道に乗せ、自分の子どもたちへ無事に承継させました。妻は、相続対策に取り掛かろうと考えますが、夫は自分の財産は自分の自由にしたいといって譲らず、協力姿勢を見せません。妻はなにか方法はないか考えますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

70代経営者夫婦…無事に承継・引退するも「相続が不安」

今回の相談者は70代の福田さんです。自分と夫の相続について悩んでいるということで、筆者のもとを訪れました。

 

福田さんは65歳まで、同い年の夫と会社を経営していました。会社の経営も順調で、地方に支社を持つまでに成長しています。2人いる子どもたちはすでに独立・結婚して別世帯となっています。

 

「子どもに会社を継いでほしいと考えており、長男・長女とも、30歳になる前に、うちの会社に戻ってもらいました」

 

長男と長女は、いずれも新卒で大手企業に就職しましたが、その後、後継者となるために福田さん夫婦が経営する会社に入社しました。また、福田さん夫婦も経営を子ども世代に任せるべく、数年かけて自社株を贈与しながら事業継承の準備をし、65歳を迎えたのを機に、完全にリタイアしました。

 

いまは長男が社長、長女が専務となり、問題なく会社を運営ししています。

 

「福田さん夫婦が会社を創業してから、30年近くがたちます。もちろん大変な時期もありましたが、おかげさまで成長しました。役員報酬のほかに、退職金となる生命保険の積み立てもおこない、退職時には夫が1億円、私は8,000万円の退職金を受け取っています」

「俺の死後のことまで考えたくない!」

これまでも金融資産を積み上げてきたことに加え、さらに退職金が加算されたことで、相続対策について検討するべきタイミングになったと福田さんは言います。

 

「なんらかの節税対策をしながら、遺言書も作成することを検討しているのですが、夫と足並みがそろわないのです…」

 

福田さんはしっかりと対策を立てておき、自分自身も、子どもたちも不安を感じないようにしておきたいのですが、夫はそうではないといいます。

 

「いくら私が相続対策を急かしても、夫は動こうとしません。〈自分の財産は好きなように使わせてほしい〉〈俺が死んだあとのことまで考えたくない。みんなでどうにかすればいい〉といって、まったく協力しないのです…」

 

妻子のアドバイスは、夫の耳に届かないようです。

非協力的な夫に不満が募るが、対策の手立てはわからず…

福田さんは腰を上げない夫にしびれを切らし、1人で動き始めたということでした。

 

「何年も前から頼んでいるのに…。本当に腹が立ちますが、もう、どうしようもないと思っていまして。最低限、自分だけもできる対策を教えてください」

 

都内にある福田家の自宅は夫婦共有です。子どもたちはそれぞれ自宅を購入しており、同居の予定もないそうです。つまり、夫婦が亡くなったあとは売却し、子どもたち2人で分ければいいと考えています。

 

また、退職金が入ったことで金融資産が増えていますが、保険に加入するほか、孫たちへの教育資金贈与をするなど、ある程度の対策も行っています。それらを踏まえたうえでの、さらなる相続対策なのですが、非協力的な夫を前に、どのような手立てがあるのかわからず、途方に暮れている状態だといいます。

妻の財産…夫に渡さず、2人の子どもたちへ等分に相続させる

話を聞いていた提携先の税理士は、福田さんが保有する多額の金融資産に注目しました。

 

福田さんと夫のどちらが先立つかはわかりませんが、夫には福田さん以上の財産があります。仮に夫より福田さんが先に亡くなったら、当然ですが、夫が半分の遺産を相続する権利があります。

 

「福田さんのご主人は、福田さん以上に財産をお持ちです。そのことから、万一福田さんが先だった場合、それによってご主人の財産をさらに増やすことは得策ではありません。ご主人が亡くなったときの相続税が増えてしまうからです」

 

このことから福田さんは、福田さんの財産は2人の子どもに等分に相続させ、夫には何も相続させない、という内容で公正証書遺言を作成することをお勧めしました。

 

福田さんは納得してこの提案を持ち帰り、2人の子どもたちと相談しました。その結果、提案した内容で遺言書を作成することになり、速やかに公正証書遺言を作成する運びとなったのです。

 

「子どもたちのための相続対策なのに、まったく動こうとしない夫にイライラが募っていました。でも、今回遺言書を作成したことで気持ちが落ち着きました。子どもたちに〈いいこと考えたのよ!〉って話したら、笑ってましたよ」

 

福田さんは冗談めかして、明るく話してくれました。

 

相続対策は、夫婦一緒に行うことが望ましいのですが、意見が合わないこともあります。相手の考えを変えようとして時間やエネルギーを消耗するより、まずは自分だけでできる対策を検討するというのも選択肢です。夫には遺留分の請求の権利が残りますが、請求がなければ遺言書通りの相続が実現します。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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