投資信託の購入時手数料の一例
この投資信託の購入時手数料は、購入金額が1,000万円以下の場合、税抜きで3%です。したがって、この投資信託を500万円分購入したとすると、購入時手数料の金額は、
500万円×3%=15万円(税抜き)
になります。
つまり、この銀行は、退職金プランの特別金利で、通常の金利に比べて8万6,000円も多い利息を支払ったとしても、セットで販売した投資信託から15万円の手数料を受け取ることができるのです。結果、差し引きで6万4,000円の儲けになります。
しかも、銀行が稼げる収益は購入時手数料だけではありません。このケースでは、信託報酬が年1.13%(税抜き)課せられます。
信託報酬は投資信託の純資産総額に対してかかるものなので、仮に500万円で純資産総額が変動しなかったとすると、徴収される信託報酬は年間5万6,500円になります。
販売金融機関である銀行は、通常、運用管理費用の半分程度を受け取るのが業界慣習なので、この5万6,500円がまるまる銀行の儲けになるわけではありませんが、プランの利用者からすると、当初1年間でかかる購入時手数料と信託報酬の合計額は、500万円に対して20万6,500円(税抜き)にもなるのです。
これでは、いくら定期預金の特別金利で8万7,500円の利息が受け取れたとしても、到底ペイするものではありません。
正直、退職金プランのどこが利用者にとってメリットなのか、さっぱり分かりません。「退職金プラン」という一見、便利そうな言葉に騙されてはいけません。
仮に退職金を60歳で受け取ったならば、一度に「退職金プラン」に預けるのではなく、「新NISA」の非課税枠を活かし、65歳までの5年間か、70歳までの10年間をかけて積立投資していきましょう。
中野 晴啓
セゾン投信創業者