(※写真はイメージです/PIXTA)

近年「ESG」をテーマにした投資商品が世界的に増えており、運用資産残高は4,900兆円にのぼります。こうしたなか、ESGを「点数稼ぎ的な要素」として捉える企業もいると、鎌倉投信の代表取締役社長である鎌田恭幸氏はいいます。「ESG投資」は“王道”となるか、それとも“一過性のブーム”で終わってしまうのか……詳しくみていきましょう。

ESG投資の具体的な選定基準

一般に、ESG投資では

 

(1)時価総額基準によって時価総額の上位企業を対象として

(2)「網羅的な評価項目」について「形式的」に評価

 

され、総得点の上位がファンドに組み入れられる傾向にあります。分かりやすくいえば、実技ではなく、ペーパーテストによる総合点(偏差値)が重要な指標となります。

 

そのため、企業のESGへの取組みの実体を知る企業IR(InvestorRelations:インベスター・リレーションズ)のコンサルタントと話をすると

 

「ESGの評価は、深さを追っていないので、合格点に達していれば、それ以上に極める意味もなく、企業の本質や存在価値を追求するまでに至っていない」

「(会社としての)点数稼ぎ的な要素があるので企業のIR担当者も困惑している」

 

といった嘆きも聞こえてきます。

 

つまり、現段階のESG投資は、企業活動の表層、つまり「着こなしの美しさ」を評価するにとどまっていて、投資する資産運用会社が「表層の奥にある社会価値創造の根源をはかる」には、さらなる工夫が求められそうです。

 

その分かりやすい例が、「G」ガバナンスの評価でしょう。

 

上場会社におけるガバナンスとは、一般に「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義されます(※)

※「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」日本証券取引所

 

ESG評価では、これをはかる項目として、取締役会の人的構成や監査委員会の独立性、経営陣の報酬開示、汚職や不正防止といった企業倫理などが挙げられています。

 

「G」は、「E」や「S」と比べると比較的短期間で実績が見えるため、会社にとって取組みやすい分野といえるでしょう。そして、確かに、形式を整えるのではなく、自社に合ったガバナンスに真剣に向き合い、その在り方を試行錯誤する会社にとっては、経営の持続性を高める効果があると感じています。

 

しかし、ESG評価の「G」で高い評価を得た会社でも、実際には、しばしば不祥事や経営を揺るがしかねない問題が生じるのはなぜでしょうか。

 

筆者は、会社の持続的成長を支える重要な柱は、表面的なガバナンス評価では量れない大切な要素が他にあるからではないか、と推察しています。そのひとつが、「経営思想」です。

 

経営思想とは、会社経営に対する経営者の思想・哲学や信念を意味するもので、経営者が企業活動を通じて存在目的である「経営理念」を実現するための根本精神にあたるものです。

 

突き詰めれば、「会社の存在目的を深く自覚し、その目的達成に向けた存続責任の果たし方への信念。とりわけ、社員一人ひとりの人生を預かり、幸福を探求し続けることへの覚悟」の表れといえるでしょう。

 

これこそがガバナンスの本質、つまり経営管理の根源だと感じます。こうしたことは、アンケートなどによる調査では推しはかることが難しいだけに、経営者と繰り返し面談するなかで発せられる言葉や実際の行動、現地を訪問して職場の雰囲気や働く人の表情などに実際に触れることで感じ取るしかありません。

 

次ページ「ESG」の「G」を体現する経営者の“姿勢”

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