「会社を売りたいです」「じゃあ、買おうかな!」→会社の価値を見定める、M&A〈ビジネス・デュー・ディリジェンス〉のやり方【公認会計士が解説】

「会社を売りたいです」「じゃあ、買おうかな!」→会社の価値を見定める、M&A〈ビジネス・デュー・ディリジェンス〉のやり方【公認会計士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

優れた技術等を他社に承継してもらうため、あるいは、自社で新たなビジネスを展開するため、M&Aを検討する企業が増えています。M&Aのプロセスにおいてとくに重要な「ビジネス・デュー・ディリジェンス」ですが、これはどんな目的のもとでおこなわれ、進行・着地を目指すのでしょうか。公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「ビジネス・デュー・ディリジェンス」とはなにか?

生徒:先生、ビジネス・デュー・ディリジェンスとは、どのようなものでしょうか。

 

先生:ビジネス・デュー・ディリジェンスとは、M&Aで買収を考えるとき、対象事業がうまくいっているか、儲かっているかを調べることです。それをもとに、事業計画が適切かどうかを見極めたり、買収価格を決めたり、事業戦略を立てたりするのです。

 

生徒:具体的に、どのようなことを調べるのでしょう?

 

先生:市場の状況や対象事業の強み・課題などを分析し、事業計画を必要に応じて修正することが主な目的です。また、対象事業が単独で経営を続ける場合と、自社と統合してシナジー効果が出る場合の、2つのケースを想定して考えます。

 

生徒:「シナジー効果」とはどのようなものでしょうか?

 

先生:シナジー効果とは、企業同士が連携し、互いに機能を活用したり協力したりすることで得られる相乗効果のことです。「1+1」が「2」より高くなる状態を意味します。

 

生徒:なるほど。シナジー効果が上手く活用されれば、もっと利益を増やすことができるのですね。

 

先生:そうです。ビジネス・デュー・ディリジェンスでは、まず対象事業が単独で経営を続ける場合の事業計画を調べ、買収価格を考えます。そのうえで、自社と統合してシナジー効果が出ることを想定し、買収価格を考えるのです。

 

[図表1]M&Aにおけるシナジー効果の例

 

生徒:どのようなポイントに注目すればいいのでしょう?

 

先生:売上高から売上原価と販売費・一般管理費を差し引いた営業利益が一番重要です。市場や対象事業の状況を調べて、売上や売上原価や販売費・一般管理費がどのように変わっているのかを分析するのです。

 

生徒:ビジネス・デュー・ディリジェンスには、それ以外にも目的があるのでしょうか?

 

先生:もう1つの目的は、買収後の事業戦略を立てることです。対象事業を調査することで、市場の将来や対象事業の強みや課題がわかるのです。その結果をもとに、買収後の事業戦略を考えることができます。

 

生徒:なるほど。ビジネス・デュー・ディリジェンスは対象事業をよく理解して、適切な買収価格を決めるために重要なのですね。

 

先生:その通りです。ビジネス・デュー・ディリジェンスは、買収価格だけでなく、事業の競争力を強化するための戦略や、将来的な成長の見通しを立てるためにも役立ちます。そのため、ビジネス・デュー・ディリジェンスをしっかりおこなうことが、M&Aを成功へと導くこととなるのです。

 

★ビジネス・デュー・ディリジェンスの基本はこちらをチェック

【M&AのDD】ビジネス・デュー・ディリジェンスの基本

ビジネス・デュー・ディリジェンスの調査の「4つの視点」

生徒:先生、ビジネス・デュー・ディリジェンスの調査は、どのような視点からおこなわれるのでしょう?

 

先生:いい質問ですね。実は、ビジネス・デュー・ディリジェンスでは主に4つの視点から調査がおこなわれます。まずひとつ目は「外部の事業環境」。売上や市場、競合状況を調べ、コストについても詳しく調査します。

 

生徒:なるほど。外部の事業環境を調べるのですね。

 

先生:次に「内部の経営資源」を見ます。これは「QCD」すなわち「品質・コスト・納期」や、「4M」すなわち「人、機械、材料、方法」の観点から分析されます。さらに、情報システムの統合やデータ移行が問題なくおこなわれているかを確認し、課題があれば対応策を検討する必要があります。

 

生徒:情報システムまで調べるのですね。ほかにどのような視点があるのでしょう?

 

先生:あとは「ガバナンスの視点」です。これは、対象事業の経営が自社の基準に合っているかどうかを調べることで、たとえば、子会社管理や決裁権限などが適切に運用されているかをヒアリングし確認することなどがあるでしょう。

一般的なビジネス・デュー・ディリジェンス「3つのステップ」

生徒:個人的に知りたいのですが、外部の事業環境の視点でデュー・ディリジェンスを実施する場合、具体的にどのように進められるのでしょう?

 

先生:外部の事業環境のデュー・ディリジェンスは、3つのステップで進めます。まずは、対象事業の市場の将来や強み・弱みを調べ、他社と比べてどれくらい優れているか単独で評価します。市場環境が変わっても問題ないかもチェックする必要があるのです。

 

生徒:事業の強みを見極めることが重要なのですね。

 

先生:次に、事業価値を向上できる可能性を分析します。単独で売上やコストを改善できるか、また自社と統合することでどれくらいのシナジー効果が発揮され、利益が増えるかを検討します。ただし、シナジー効果がマイナスになることもあるので注意が必要です。その際、対象事業の経営陣と話し合い、事業価値向上の可能性を議論しなければいけないでしょう。

 

生徒:M&Aの結果として利益が増加すると大成功ですね!

 

先生:最後のステップでは、事業計画を修正します。対象事業の経営陣が作った事業計画が現実的かどうかをチェックし、改善の余地があれば修正する必要があるでしょう。その際、シナジー効果も考慮することになります。

 

生徒:受け取った事業計画をそのまま採用することはできないのですね。

 

先生:これらのステップを終えたら、将来予測の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を作成して、事業価値評価や買収後の課題抽出の検討作業に進みます。

 

生徒:キャッシュフローの計算までおこなうのですね!

 

★個人事業主の所得の計算方法はこちらをチェック

【事業所得】自営業者(個人事業主)の所得の計算、雑所得との違いまで解説

ビジネス・デュー・ディリジェンスを進める体制に必要な人材

先生:ビジネス・デュー・ディリジェンスを進めるチームには、どのような人材が必要だと思いますか?

 

生徒:経営の視点で対象会社の価値を判断できる人、そして対象事業の仕組みを理解できる人が必要ではないでしょうか。

 

先生:そうですね。さらに、製造工程や情報システムに詳しい人も加えることが望ましいでしょう。

 

生徒:なるほど。チームには様々な専門知識を有する人が必要なのですね。

 

先生:ビジネス・デュー・ディリジェンスとは、基本的に、対象事業の現状を把握し分析し、強みや課題を明らかにしたうえで、受け取った事業計画に反映させていくという作業をさします。しっかりと覚えておくといいでしょう。

 

生徒:ありがとうございました。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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