「損益計算書」から企業の“安全性”がはっきりわかる「4つの利益率」の読み方【人気簿記講師(税理士)が解説】

「損益計算書」から企業の“安全性”がはっきりわかる「4つの利益率」の読み方【人気簿記講師(税理士)が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

今日、会計の知識は、あらゆるビジネスパーソンにとって重要です。税理士・民間企業の経理担当役員で人気簿記講師でもある石川和男氏が、著書『決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」』(PHP研究所)から、決算書の「読むべき項目」や「順番」をわかりやすく解説します。今回は、損益計算書の数字を基に算出できる、企業の収益性の高さを示す4種類の「利益率」について解説します。

◆人件費を安易に削ったことで経営が悪化する例

たとえば、人件費を削るためにリストラをする。本来リストラは「企業の経営に係る組織再編のための行動」という意味ですが、日本ではなぜか人件費削減・クビ斬りの意味で使われる傾向にあります。

 

人件費の高いベテラン社員をクビにしたり、給与水準を下げたりすると、一時的に営業利益は増えます。

 

しかしベテラン社員の技術の継承が途絶えたり、能力のある人材が流出したり、残った社員のやる気が低下したりするなど、数えきれない弊害が会社を襲ってきます。

 

エナジードリンクを飲んで、一時的に元気が出たものの効果が切れたときにものすごいダルさが襲ってくるのと同じように人件費の削減は一時的には効果があるのですが、後から大きなツケを支払うことになりかねません。

 

広告宣伝費は会社が商品を広く一般に知ってもらって、販売するために必要な費用です。どんなに良い商品を作っても、それを世間に知ってもらうことができなければ、たくさん売ることはできません。

 

広告宣伝費も削りすぎると、売上高に悪影響の出る費用です。会社は良い商品を作り、それを世間に知ってもらうために、多すぎず少なすぎずのバランスの良い広告宣伝費が不可欠です。

 

広告宣伝費が前年に比べ大幅に増加した場合には、それが新商品を売るための大キャンペーンのためのものなのか、売れなくなってきた商品のテコ入れのためのものなのかを分析する必要があります。

 

[図表6]2022年国内製薬会社売上高、営業利益額1位の武田薬品工業株式会社

 

研究開発費も製造業に欠かせない費用です。魅力のある新商品を開発するためには、削減するわけにはいきません。高い売上総利益率をマークしている製薬業ですが、製薬業は新薬開発のために莫大な研究開発費を投入しています。

 

したがって、売上総利益率が高くても、営業利益は控え目な数値になります。研究し開発を続けることで高付加価値の商品を作り、高い売上総利益を上げることができるので、研究開発費(販売費及び一般管理費)が多くなる仕組みになるのです。

 

付加価値の高い会社では、付加価値を生み出すために広告宣伝費や研究開発費が多額になるため、販売費及び一般管理費が多くなります。高い売上総利益率に比べ、低い営業利益率になる傾向があります。

 

一方で、付加価値が低く薄利多売の戦略をとる会社は、販売費及び一般管理費が抑えられる傾向があります。売上総利益率と営業利益率に、あまり差が出ません。

 

結局、営業利益率はすべての業種・業態において差が少なくなりますので、会社の収益性を判断する上では、営業利益率が重要な数値となるのです。

 

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決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」

決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」

石川 和男

PHP研究所

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