「損益計算書」から企業の“安全性”がはっきりわかる「4つの利益率」の読み方【人気簿記講師(税理士)が解説】

「損益計算書」から企業の“安全性”がはっきりわかる「4つの利益率」の読み方【人気簿記講師(税理士)が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

今日、会計の知識は、あらゆるビジネスパーソンにとって重要です。税理士・民間企業の経理担当役員で人気簿記講師でもある石川和男氏が、著書『決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」』(PHP研究所)から、決算書の「読むべき項目」や「順番」をわかりやすく解説します。今回は、損益計算書の数字を基に算出できる、企業の収益性の高さを示す4種類の「利益率」について解説します。

「売上総利益率」からは、商品やサービスの強さが分かる!

売上総利益は、「売上高」から「売上原価」を差し引くことで求められる利益です。

 

売上総利益率は、「売上高」に占める「売上総利益」の割合で、下記の算式により求めることができます。

 

売上総利益率=売上総利益/売上高×100

 

売上総利益率からは、会社の扱う商品やサービスの強さ、つまり「付加価値」の高さが分かります。売上総利益率が高いということは、付加価値が高い魅力のある商品やサービスを提供できていることを意味しています。

 

お客さまに必要な商品は高くても売れるからです。

 

また商品の販売価格は、「原価+利益」で成り立っています。売上総利益率とは逆に、「売上高」に占める「売上原価」の割合を「原価率」といい、下記の算式で求めることができます。

 

原価率=売上原価/売上高×100

 

原価率は低いほうが、利益は多くなります。原価率は、売上原価というコストの管理に役立てます。

 

一方、高い付加価値を与えることのできない商品は、大量生産によってコストを下げて安く大量に販売する、薄利多売の戦略で儲けていくことになります。

 

売上総利益率の水準は、業種や業態によって大きく差が出ますし、同じ業種でも扱うものによって異なります。

 

たとえば、製薬業の売上総利益率の平均値が44%であるのに対し、同じ製造業でも鉄鋼業の平均値は8%程度となっています。

 

売上総利益率および原価率の関係を、[図表5]に示します。

 

[図表5]売上利益率と原価率の関係性

 

このとき、原価率が下がれば利益率は上がり、利益率が下がれば原価率は上がるという関係になります。

「営業利益率」からは、会社の本業で儲ける力が分かる!

営業利益率は、「売上高」に占める「営業利益」の割合です。

 

営業利益率=営業利益/売上高×100

 

営業利益は、本業でたたき出した利益です。売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて求めます。販売費及び一般管理費は、商品を売るために必要な費用です。営業利益は、会社の本業による利益、会社の本業の成績といえます。

 

つまり、営業利益率は、会社の本業で稼ぐ力を示す数値といえます。

 

営業利益率が高ければ高いほど、会社の経営が上手くいっていることが分かります。業種別の営業利益率の平均値は製造業で3.8%、小売業で2.8%です。同業種の平均値より高い数値が出せていれば、本業で稼ぐ力は十分あり、優秀な経営成績といえるでしょう。

 

営業利益の金額は、販売費及び一般管理費の金額の影響を強く受けます。販売費及び一般管理費を削ることができれば、営業利益を多くすることができます。

 

しかし、販売費及び一般管理費には「人件費」「広告宣伝費」「研究開発費」など、削ると悪影響を及ぼす可能性のある費用も多く含まれています。安易に削ると経営が上手くいかなくなることもあります。

 

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次ページ人件費を安易に削ったことで経営が悪化する例
決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」

決算書は、「ここ」しか読まない 企業の伸びしろを1分で見抜く「読み方のルール」

石川 和男

PHP研究所

●決算書を読むのに、煩雑な会計知識は一切不要! ●合格率No.1簿記講師が教える「重要項目」と「読む順番」 ●最短最速で企業分析できて、投資・ビジネスに役立つ1冊! 本書は、これまで決算書を読むことに苦手意識を抱…

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