ウクライナが実践する「次世代の戦い方」
佐々木 とくに欧州諸国において、偽情報やナラティブを拡散する発信源であるロシア政府系メディアやプラットフォームを使用禁止にしたことが挙げられます。
3月2日、EUにおいて、ロシア系メディアである「RT(Russian Today)」および「スプートニク」とそれらの子会社の衛星放送、オンラインプラットフォームやアプリの禁止を決定しました。偽情報だろうが事実を含んだナラティブであろうが、その発信源を絶つという戦略を実行したわけです。
重ねてEU副委員長のヴェラ・ヨウロバー氏は、「ロシア政府が情報を武器にしている。ロシアの在外公館アカウントや政府機関アカウントの広範なネットワークがロシア政府に属することに鑑みて、利用規約を厳しく適用し、法律やサービス規約に反するコンテンツにただちに対処するようにプラットフォーム各社に求める」とも述べています。
これらの施策も、ロシアの国際場裏での情報戦がなかなか成果を得ず、ウクライナが優勢を保っている一要因になっていると考えられます。
また、ウクライナ政府によって、ロシアの偽情報やナラティブにウクライナ国民が侵されないように、ウクライナ国内から、ロシア系インターネットサービス「フ・コンタクテ(ロシア最大のSNS)」「アドナクラースニキ(同級生の意のSNS)」「ヤンデックス(検索サイト)」「Mail.ru」のブロック措置がすでに2017年には実施されていることも付言しておきたいと思います。
軍事的な情報作戦でもウクライナは優勢を確保
渡部 軍事的な情報作戦でもウクライナはロシアを上回っている状況です。これについて、さらに情勢が明らかになってきたので、佐々木さん説明してください。
佐々木 以前、テレグラムの「ロシアの戦争を止めろ(Stop Russian War)」でウクライナ軍はロシア兵の情報を得ていたことが報じられていました。
その後、さらにセキュリティを担保したアプリを活用している状況が明らかになりました。デジタル変革大臣兼副首相のミハイロ・フェードロフ大臣のインタビュー記事によれば※、市民によるロシア軍に関する情報提供について、「Ye Vorog(敵がいる)」というチャットボットを活用しているとのことです。
※渡部恒雄ほか「デジタル国家ウクライナはロシアに勝利するか」『日経BP』2022年7月号
情報報提供時には、ウクライナ政府がDX(デジタル・トランスフォーメーション)政策で推し進めた公共サービスアプリの「Diia(国家と私)」による個人認証が求められ、情報源の秘匿と情報源の信頼性の向上を図っています。
「Ye Vorog」のアクセス画面のトップページには「軍事装備の動きと占領者の軍隊(ロシア軍)の住所を報告してください。それらの情報はウクライナ軍が敵に報復することを支援することができます」とあります。
これらの民間からの戦術情報をも活用してロシア軍への攻撃を実施している様子が徐々にわかってきました。こうした情報がロシア軍将官の位置を特定することに寄与しており、狙撃にまで至っているとみられます。
渡部 悦和
元陸上自衛隊 陸将
井上 武
元陸上自衛隊 陸将
佐々木 孝博
元海上自衛隊 海将補
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