コツは“ちょっとだけ”。「同じような仕事への転職」で「年収100万円アップ」を連発した方法【10回転職したキャリアコンサルが伝授】

コツは“ちょっとだけ”。「同じような仕事への転職」で「年収100万円アップ」を連発した方法【10回転職したキャリアコンサルが伝授】
(※写真はイメージです/PIXTA)

年収をアップさせる最強のソリューション、それは「転職」です。ただし年収の大枠を決めるのは「業界×職種」であるため、多くの人がやりがちな「同業界同職種」への転職ではほとんど変化がありません。年収を上げるには、「業界」や「業種」といった“軸”を少しだけずらすことが重要です。森田昇氏の著書『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

「ちょいスラ転職」の3方向

「ちょいスラ転職」では、まず3つの方向を検討します。

 

3方向とは「業界」と「職種」、そして役職と会社の「ポジション」です。この3つをあなたの今の業界、今の職種、今のポジションから“ちょっとだけ”スライドして転職します。それが「ちょいスラ転職」の極意です。あまり飛び過ぎると適応するまでの壁が高すぎて今後のキャリアにも影響するため、コツは“ちょっとだけ”です。

 

「業界」と「職種」はすでに説明していますので、ここでは「ポジション」について取り扱います。

「役職のポジション」をずらす ~転職を機に役職を1つ上げる

まず役職から。役職とは、会社内におけるポジションを明確にするものです。皆さんもご存知の通り、役職が上がるほど年収は高くなり、会社内での責任も大きくなります。役職を細かく分類すると、「プレイヤー」と「管理職」の2つに分かれます。

 

例)プレイヤー…一般社員、主任、係長、プログラマー、システムエンジニア、プロフェッショナル、スペシャリスト等

 

管理職…課長、部長、本部長、社長、リーダー、マネジャー、ディレクター、CEO等

 

この「役職のポジションを“ちょっとだけ”スライドする」とは、転職を機に役職を1つ上げることです。役職は「業界×職種」で決定される年収の大枠内での位置を決めてくれる「能力」の証明ですから、これをスライドすれば「同業界同職種」への転職でも年収はアップします。私は「同業界同職種」で親会社を経由してプログラマー⇒システムエンジニアへと転籍後、年収が100万円アップしました(4社目⇒5社目⇒6社目)。2つ以上は飛び過ぎるので1つでいいです。業界も変わらず、エンジニアという大枠の職種も変わらないのに年収アップ、いいですよね。

 

ただ、前述の3つの軸ずらしと比較すると年収アップはそれほどでもないですし、もしプレイヤーだったあなたが、新しい職場環境の中で未経験のうちに管理職になってしまったなら、想像以上に大変です。管理職1年目でマネジメントの右も左もわからない状態なのに、これまで一緒に働いたことがない人たちを率いるのはハードルが高いからです。

 

役職はプレイヤーと管理職で分かれていますから、プレイヤーの中で役職を上げるか、管理職として役職を上げるかなら、そこまで差異はないので負担は少ないでしょう。このように、年収アップの度合いで役職のポジションを1つ、“ちょっとだけ”スライドするのを考慮してみてください。

「会社のポジション」をずらす ~「商流」を上がる or 下がる

これまで転職で年収アップさせるには、企業規模が大きな会社へ転職するという方法が一般的でした。それにプラスされたのが、業界や職種をずらして年収の高い業界や職種へと転職していく「軸ずらし転職」です。それを細分化した「ちょいスラ転職」に役職と、これから説明する会社のポジションをずらす視点も加えることでリスクなく年収を上げていきます。

 

会社のポジションとは、以前説明した「商流の位置」です。会社同士の商流の代表的な例は3つありましたが(図表1)、この商流の上流・下流どちらかのポジションを取っている会社へ“ちょっとだけ”スライド転職することです。

 

出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表1]代表的な商流 出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

会社のポジション移動では、「業界×職種」のどちらかあるいは両方とも軸ずらしでき、かつ今の業界や職種と関係性の強い会社への転職が可能です。これを狙えば遠くへ飛び過ぎる「軸ずらし転職」を防止できますし、現在の会社のポジションで得られた知識と経験がそのまま「ちょいスラ転職」先に評価されますので、年収は確実にアップします。

 

私は会社のポジション移動で、IT業界の2次請けプロジェクトリーダー⇒元請けプロジェクトマネジャーへと転職後、年収が100万円アップしました(9社目⇒10社目)。業界も変わらず、エンジニアという大枠の職種も変わらないのに年収アップ、いいですよね。役職まで上げてしまいましたが、商流の代表的な例のうち、下請け(2次請け)企業から、そこに発注している元請け企業へと商流を上がることで年収はアップできます。元請け企業は、下請け(2次請け)企業が持っているシステム開発現場の情報や経験を欲しがる傾向にありますから。

 

会社のポジション移動は、仕入から販売に至る流れでも、依頼元から依頼先に至る流れでも同じです。商社からメーカー、物流会社から依頼元(仮に大型重機を取り扱う建設会社)へのポジション移動は、一般的には企業規模も大きくなりますし、その分会社の儲けも大きいため、年収アップがしやすくなります。

 

例1)「建設資材の商社で営業をしていた経験を活かし、仕入先であるメーカーのリサーチ/市場調査部へ転職しました」

 

例2)「物流会社でドライバーをしていた経験を活かし、建設会社での購買・資材調達部へ転職しました」

 

商流は個人への接客(toC)へ近づくほどブラック化しやすいので、会社のポジション移動の基本は対会社(toB)が基本となる、「商流を上がる」ことです。あえて下流へと移動することで年収アップを狙う“ちょっとだけ”スライド転職もありますが、その場合、商流が下の業界や会社が、今の会社や業界より儲かっていることと、役職は必ずアップさせるのが条件となります。そうでないと年収アップにはつながりません。

ポジション移動の例

役職のポジション移動と、会社のポジション移動を「ポジション移動図」にまとめると、図表2~5のような感じです。

 

商流を上がるなら役職が1つくらい下がっても年収はアップしますが、逆に商流を下がるなら役職は上げないと年収ダウンしがちなので×を付けています。商流が変わらない業界や職種への転職も、年収アップのために役職は必ず上げてください。

 

出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表2]ポジション移動図(商社の営業課長からスタート) 出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表3]ポジション移動図(物流の管理部門係長からスタート) 出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表4]ポジション移動図(IT業界のPLからスタート) 出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表5]ポジション移動図(不動産業界の営業マンからスタート) 出所:森田昇著『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

 

森田 昇

10回転職したキャリアコンサルタント・中小企業診断士

 

何の資格も技術もないまま就職氷河期の1998年に大学を卒業、社会人となる。新卒入社した年収300万円のブラックIT企業四天王の一角(当時。その後倒産)を3年で辞めた後、2社目は1ヵ月で、3社目は2ヵ月で退職。サラリーマン生活20年間で10回の転職を経験し、年収の乱高下を味わうも「ちょいスラ転職」で年収300万円からの脱出を果たす。

この転職法を紹介した再就職支援セミナーをハローワークで100回以上開催、2,000人の転職と再就職の支援をする。Twitterフォロワー数合計13,000人。著書に『売れる!スモールビジネスの成功戦略』(明日香出版社)がある。

 

※本連載は、森田昇氏の著書『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

年収300万円から脱出する「転職の技法」

年収300万円から脱出する「転職の技法」

森田 昇

日本能率協会マネジメントセンター

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