令和5年春場所「懸賞本数1,404本」…“11場所ぶりの減少”が示す、日本景気のゆくえ

景気の予告信号灯としての「身近なデータ」(2023年4月2日)

令和5年春場所「懸賞本数1,404本」…“11場所ぶりの減少”が示す、日本景気のゆくえ
(※画像はイメージです/PIXTA)

「今年の漢字」や、世界的なスポーツ大会における日本代表チームの活躍、大河ドラマや連続ドラマの内容…多くの国民が注目する「身近なデータ」が、実は景気や株価と深い関係にあることをご存じでしょうか? 今回は、景気の予告信号灯として「JRA売得金」と「大相撲の懸賞本数」を見ていきましょう。※本記事は、宅森昭吉氏(景気探検家・エコノミスト) の『note』を転載したものです。

「身近なデータ」は景気の予告信号

~はじめに:生身の人間が行う経済活動を読み取れる身近なデータ

 

経済の話って難しいと思っていませんか。でも経済活動は国民みんなが毎日何らかの形で関わっています。経済活動の主体は人間です。人間が行う経済活動ですから、ロボットのように機械的に動くものではありません。純粋な経済的要因以外からも様々な影響を受けています。

 

私のエコノミストとしての40年間の経験からみて、「今年の漢字」、スポーツ世界大会での日本代表チームの活躍、大河ドラマや連続ドラマの内容、子どもの歌のヒットなど、国民の大部分が注目するような身近な事象やデータは、景気や株価と関係が深いものが多く、景気の予告信号として使えます。

 

例えば、1997年11月北海道拓殖銀行の経営破綻の発表時、日経平均株価は暴落するどころか、約1,200円も上昇しました。この前夜にサッカー日本代表が史上初のW杯出場を決めたからです。生身の人間が経済主体である以上、そのマインドが株価を動かすことが実際にあるという例です。

 

さまざまな景気の予告信号をみて、その中の変化に気づき、あとから関連の経済指標で確認することで、いち早く景気動向を把握することができます。

 

これから、景気の予告信号灯となる様々な身近なデータを探検し、お伝えしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

景気の良さを反映して伸びる「JRA売得金」は…

~昨年まで11年連続前年比増加だったJRA売得金、今年に入ってからはもたついた動きに

 

22年のJRA売得金は前年比+5.8%と、98年から11年まで14年間連続前年比減少の後、12年から11年連続で前年比増加になりました。金融危機で大きく落ち込んだ日本経済が持ち直し、いわゆるアベノミクス景気などでデフレから脱却した動きを示唆しているようです。

 

23年の景気は回復の動きが足踏み状況になっていますが、23年に入ってからのJRA売得金は年初からの累計前年比も、もたついた動きになっています。1月9日時点の累計前年比は▲1.5%と年初はマイナススタートになりました。2月後半から3月はじめでは累計前年比は一時増加に戻りましたが。しかし、昨年3月が20日まででまん延防止等重点措置が終了していた反動が出たのかもしれません。3月26日までの週までの累計前年比は▲2.7%の減少になっています。相次ぐ値上げが実施されていることで、勝ち馬投票券に回すお金が減っていることがないかどうか、当面の動向を注視したい局面です。

 

企業の業績・広告費と連動しやすい「懸賞本数」は…

~大相撲春場所の懸賞は前年同場所比減少。人気大関・貴景勝の休場だけが原因か。

 

1月に開催された令和5年初場所は、横綱が休場した照ノ富士1人・大関が貴景勝1人で1横綱・1大関という明治31年(1898年)春場所以来125年ぶりの異例の番付でした。優勝は貴景勝で、獲得した懸賞は453本でした。貴景勝の人気ぶりがわかる数字です。大相撲初場所の全体の懸賞本数は1,817本、前年同場所比+8.4%と10場所連続で増加となりました。コロナ禍で最高水準を更新し、コロナの影響がほぼなかった令和2年の初場所の1,835本に接近しました。企業の業績・広告費の底堅さが感じられる数字と言えました。

 

3月に大阪で開催された春場所も1横綱・1大関で、貴景勝にとっては綱取りがかかった場所でしたが、膝の怪我で3勝しただけで7日目から途中休場になってしまい、貴景勝が獲得した懸賞は79本にとどまりました。それでも懸賞獲得ランキングで第5位に入りました。優勝した関脇・霧馬山は120本で第2位、第1位は関脇・豊昇龍の145本でした。事前申し込みの懸賞本数は約1,600本でしたが、結果は1,404本にとどまり、前年同場所比▲6.0%と11場所ぶりの減少になってしまいました。

 

景気動向指数による機械的景気の基調判断が「足踏み」状態で、先行き判断の下方修正も懸念されている、現状は微妙な景気状況です。貴景勝の取り組みに懸賞を懸けていた企業が、他の取り組みに振り替えずに取り消したという動きに、企業が景気の足踏み感を感じているからという理由があるのかが気になります。

 

 

※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。 さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。 23年4月からフリー。景気探検家として活動。 現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

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