(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍や異常気象、紛争などさまざまな影響により、あらゆる商品やサービスの値上がりが止まりません。“家計の悪者”のようにテレビや新聞等では報道され、「いかに安く暮らすか」がさかんに議論されています。そこで本記事では、企業がやむを得ず値上げを決断することになっても客の心を離さない経営術について、株式会社 YRK and取締役の深井賢一氏が解説します。

値上げは社会問題への「活動量」

どの企業も頭を悩ませているのは、相次ぐコスト上昇をどう吸収するかではないでしょうか。やむを得ず値上げに踏み切ると、店頭価格を引き上げる前から、家計を脅かす悪者のように報道されているようにも映ります。しかし値上げの要因は、社会問題と、その解決コストによるものです。

 

・戦争や紛争によるエネルギー費増

・人権問題やフェアトレードによる人件費増

・異常気象による農作物の不作

・温暖化による水産物の不漁

・規制や認証マークの強化など

 

細かく挙げればきりがないほど、社会問題とコスト増加はつながっています。つまり、社会問題の大きさだけコストは上がり、その解決のための努力もコストになるわけです。

 

(出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)
[図表1]社会問題とコストの関係性 (出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)

 

そう考えれば、値上げは「悪」どころか、社会問題への「活動量」です。社会問題がある限り、コストは増えることはあっても減ることはありません。だからこそ、これらのコストを社会全体で負担することが、社会問題の解決につながると思うのです。

 

メーカーであれば、サプライチェーンで成り立っています。自社商品の値上げが成立してはじめて、その商品に関わるサプライチェーンが潤うのです。ニュースを見た主婦が、スーパーで「この商品は値上げした商品だから、安いほうを買おう」という選択をしたことで、巡り巡ってお父さんの給料が上がらないという結果を生んでいるかもしれません。

自社のなかにすでにある「ソーシャルプロダクツ」

筆者はソーシャルプロダクツの開発や普及促進に関わっています。ソーシャルプロダクツとは、「人や地球にやさしい商品・サービスの総称」で、エシカル商品、サステナブル商品、SDGs商品とも呼ばれます。

 

こうした商品は、意識の高い生活者向けだと位置付けられがちです。実際に、ソーシャルプロダクツの話をすると、うちには「ノウハウがない、ロットが合わない、コストが合わない、価格が合わないから買ってもらえない」というナイナイ尽くしの反応をされる企業が多いのも事実です。

 

筆者は日本の会社が提供する商品・サービスに、社会悪のものなんてないと断言します。だから自社のサプライチェーンやバリューチェーンを見渡せば、すでに社会問題の解決に向けたいろんな取り組みをやっているはずです。

 

まったく新しいソーシャルプロダクツを一から開発しなくても、いまある商品・サービスの社会性を見出し実感できる価値に変換することで、付加価値に変えることができるのです。

「変換」「換算」で価値を実感

誰もが知っている消費財メーカーのHPを見ると、

 

・事業活動におけるCO2排出量、30年で50%減

・商品使用後のCO2排出量、50年で50%減

・配送車年間使用燃料、5年で32%減

・自動販売機年間消費電力、10年で80%減

 

など、その企業の社会問題への取り組みが出てきます。しかしこれらの情報は、HPのIRやサステナビリティのページにしか掲載されていないので、投資家など一部の人にしか伝わりません。もったいないと思います。

 

SDGsを牽引している企業は、これらの数字を、

 

・商品1つあたり

・顧客1人あたり

・それを1年にすると

・10年にすると

・日本全国だと

・世界だと

 

というように換算と変換を行っています。換算し変換することで、選ぶ側、使う側にとっての価値が実感しやすくなったのです。

 

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