(※写真はイメージです/PIXTA)

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レイ・ダリオも「失敗から学んでいる」

実は、レイ・ダリオも「経済が破綻する」と述べて大失敗したことがあります。

 

ダリオへのインタビューを見ていると、彼は、ほとんどすべての機会で失敗談から話を始めます。それは「自分への戒め」であり、「自分が得た教訓を聴衆と共有したい」ためだろうと筆者は考えています。「失敗から学ぶ」「歴史に学ぶ」ことがレイ・ダリオの原則です。

 

ダリオの著書から、1982年の経験を引用します(→傍線は重見による)。

 

「メキシコが債務不履行に陥ったのち、FRBは経済破綻(→原著は『economic collapse』)、債務不履行に対応して金融緩和に踏み切った。これによって株式市場は記録的な上げを演じた。

 

それには驚いたが、それはFRBの動きに条件反射的に反応したものだと私は解釈した。1929年には15%の急反騰となったのち、当時最大の暴落が続いた。

 

10月になると私は私の予測をメモにした。私の目には、75%の確率でFRBの努力が及ばず、経済が破綻するだろうと映った。景気刺激に成功しても、やがては失敗に終わる確率は20%と読んだ。

 

景気救済に十分な刺激を与える可能性は5%あるが、それはハイパーインフレーションを引き起こすだろう。最悪の可能性に備えて、私はゴールドを買い、ユーロドルとのスプレッドを取るために短期国債の先物を購入した。それは信用問題が拡大することに賭けつつリスクを制限するためだった。

 

私は完全に間違っていた。少し遅れて景気はFRBの努力に反応し、インフレを伴わずに回復を始めた。すなわち、インフレは抑制され、成長は加速したのだった。株式市場は強い上昇相場に転じ、その後米国経済は18年間インフレを伴わず、史上最大の成長を謳歌した。

 

なぜそんなことが可能だったのか。やがて私は理解するようになった。債務国から資金が米国に流れるにつれ、すべてが変わった。ドルが強くなり、デフレ効果が米国経済に生じた。そのおかげでFRBはインフレを生じさせずに金利を下げることができた。

 

これがブームに火を付けた。FRBが資金を融資したため、そして債権者委員会と国際金融改革組織、たとえばIMF(国際通貨基金)とかBIS(国際決済銀行)などが、債務国が新規融資を受け債務を返済できるようにしたため、銀行は保護された。そうして、誰もが順調であるというふりをしつつ、何年もかけて償却していくことができた

 

この時期は、野球のバットで何度も頭を殴られたような経験をした。完璧に間違った、しかも公衆の面前で間違ったことは、信じがたいほど屈辱的な思いであり、私はブリッジウォーターで築いてきたすべてを失ってしまった。私は、完璧に間違った見方を自信たっぷりにひけらかす、傲慢な奴だったと思う。

 

8年間事業をしてきたのに、なにも残すべき成果がなかった。間違った回数よりも正しかった回数のほうが多かったのだが、私は振り出しに戻ってしまった。

 

あるとき、お金が底をつき、働いてくれている社員に給料を払うお金がなくなった。1人ひとり、辞めてもらうしかなかった。最後に2人の社員が残った。コールマンと私だ。コールマンも辞めるしかなかった。誰もが涙にくれるなか、彼の家族は荷物をまとめてオクラホマに戻っていった。ブリッジウォーターの社員はただ1人になった。私だけ。

 

とてもとても大切にしていた社員を失い、独立して働く夢も失いかけ、ズタズタになる思いだった。お金が足りなくて、2台目の車が売れるまで、父に4,000ドル借りなくてはならなくなった。

 

私は岐路に立たされた。ネクタイを締めてウォールストリートで働くか。それは私の望む生活ではない。とはいえ、妻と幼い2人の子供を養わなくてはならない。私は人生の大きな転機に直面した。そして私の選択が私と私の家族の将来に大きな影響を与えることはよくわかっていた」(レイ・ダリオ著、斎藤聖美訳、『PRINCIPLES 人生と仕事の原則』、日本経済新聞社)

 

いま、みなさんと私にできることは、実際にマーケット・リスクを取ってきた・いる人がなんといってきた・いるかに耳を傾けることでしょう。

 

 

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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