(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルを避けるために有効な「遺言書」ですが、遺言書には一定の「決まり」が存在し、不備があると遺言として認められないという注意点があります。実際に、遺言書が正しく作成・保管されていなかったことによるトラブルは後を絶ちません。そこで今回、元税務調査官で相続専門40年のベテラン税理士秋山清成氏が、遺言書作成に関する注意点と正しい手順、さらに信託銀行が取り扱う「遺言信託」を勧めないワケを解説します。

遺言書の原案は専門家に依頼するのがベター

それくらいの手数料なら公正証書遺言で……と思いがちですが、実際のところ、公証人は1カ所の公証役場に1~2人程しか常駐しておらず、他の案件も抱えています。ゆえに相談から原案の完成までにはそれなりの時間がかかるでしょう。

 

遺言を作成するための必要書類も公証人が集めてくれるわけではなく、遺言者本人がすべてを集めるという点も大変です。

 

このような観点から、遺言書の原案はプロに相談しながら作成してください。

 

財産に不動産が多いのなら登記の専門家である司法書士に、将来的に相続争いの可能性があるなら法律の専門家である弁護士に、リーズナブルな価格で遺言書の原案を作成したいという人は行政書士に依頼をするのがよいでしょう。

 

お勧めは「公正証書遺言」

自筆証書遺言、自筆証書遺言書保管制度、公正証書遺言を説明してきました。「結局、どれがよいの?」という質問に、私がお勧めするのは、

 

・遺言書の原案を自分で作成するなら、

公正証書遺言>自筆証書遺言書保管制度>自筆証書遺言

・遺言書の原案をプロに依頼するなら、

公正証書遺言=自筆証書遺言書保管制度>自筆証書遺言

 

です。遺言書の原案を自分で作成する場合は、やはり内容面のチェックが行われる公正証書遺言が一番お勧めで、その次に内容面のチェックは行われないけれど形式面のチェックは行われる自筆証書遺言書保管制度、そして自筆証書遺言はトラブル防止のためにもあまりお勧めはしません。

信託銀行が取り扱う「遺言信託」はお勧めしません

信託銀行の「遺言信託」サービスとは、遺言者の代わりに遺言書の作成から保管までを行い、相続発生後は信託銀行の遺言執行者が遺言書の内容を執行してくれるものです。

 

年々認知度が上がっており、実際のサービス利用件数もここ数年、約1万件ペースで増加しています。

 

しかし、私は遺言信託をお勧めしていません。

その理由は、

 

・信託銀行に支払う手数料があまりにも高額。

・遺言執行手数料の中に専門家への報酬は含まれていない。

・戸籍謄本や財産関連の書類は遺言者本人が収集(相続発生後は相続人が収集)。

 

つまり、遺言信託でできることは、司法書士などの専門家でも十分に対応可能で、信託銀行よりずっとリーズナブルです。

 

信託銀行の「プロの専門チームがワンパックで対応」「遺産相談をスムーズに」という謳い文句の裏側には、あまりにも高額な手数料があることを忘れないでおきましょう。

 

 

秋山 清成

秋山清成税理士事務所

税理士

 

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※本連載は、秋山清成氏による著書『元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

秋山 清成

KADOKAWA

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