(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資の収益を最大化するには、優良物件の購入や空室対策の徹底だけではなく、経費の知識を身につけることも欠かせません。なぜなら支出を必要経費として計上し、利益を圧縮することで納税額を抑えられ、手残りを増やすことができるからです。不動産所得は「収入-必要経費」で求められます。この収入から差し引くことのできる支出のうち、必要経費にできるものとできないもの」には、どんな費用があるのでしょうか? 宮路幸人税理士が解説します。

 

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不動産投資で経費になるものの条件とは?

アパートの賃貸経営をしているオーナーは、個人で投資をする場合、「どのようなものが必要経費として認められるのだろうか?」といった疑問や、「毎年の納税額が高い。何か他にも、必要経費として計上できるものはないだろうか?」という悩みをお持ちの方は多いでしょう。

 

不動産所得の経費として認められるのは、一言でいえば「不動産収入を得るために要した費用」です。

 

個人で所得税申告をする場合、必要経費になる部分について気をつけたいのは、個人的に使っている物件は「事業で使っている部分のみ」を必要経費とするという点です。たとえば家賃を支払う場合、1Fを事業で使い2Fは居住用として使っているとすれば、必要経費に計上できるのは家賃の半分です。この事業専用割合は合理的な基準により判断します。

必要経費の具体例一覧

必要経費となる勘定科目は、主に次のような費用が該当します。

 

1. 租税公課…固定資産税などの税金

2. 保険料…火災保険料など

3. 減価償却費…建物、建物付属設備等の減価償却費

4. 修繕費…現状を回復するための修繕費など

5. 支払手数料…管理会社に支払う管理委託料など

6. 専門家報酬…司法書士や税理士等に支払う報酬

7. 支払利息…銀行からの借入金に対する支払利息など

8. 雑費…上記科目にはあてはまらないが、収入を得るために支払ったもの

 

では、それぞれについて確認していきましょう。

 

【1. 租税公課】

不動産投資で必要経費となる税金等には、不動産を購入したときにかかる「不動産取得税」、契約書に貼る印紙などの「印紙税」、賃貸物件の登記をしたときにかかる「登録免許税」、土地建物にかかる「固定資産税・都市計画税」、「個人事業税」があります。また、「自動車税」や「自動車重量税」なども事業割合に応じて必要経費にすることができます。

 

ちなみに必要経費とならない税金等としては、個人で支払っている所得税や住民税などです。また、交通違反で支払った反則金や罰金なども必要経費にすることはできません。

 

【2. 保険料】

不動産所得で必要経費となる保険料とは、不動産収入にかかわるものです。たとえば賃貸物件にかかわる火災保険料や地震保険料などは必要経費とすることができます。また、入居者の死亡事故に備えるために大家が加入する孤独死保険なども、必要経費の対象にできます。なお、個人的に加入している生命保険料などは不動産所得の必要経費となりません。

 

【3. 減価償却費】

賃貸物件の建物や建物附属設備などは、その耐用年数に応じ、各年で減価償却費として費用配分していきます。一般的には税法で定められている法定耐用年数により償却していくこととなります。たとえば木造アパートなら22年間、鉄骨鉄筋コンクリートの場合は47年間となり、毎年同額を償却していきます。

 

減価償却費として認められないのは、家事用に使っている部分です。たとえば車両を購入し、事業に使っている割合が50%、個人的に使っている割合が50%の場合、その減価償却費は50%しか認められません。

 

【4. 修繕費】

所有している賃貸物件は、年数が経つにつれて老朽化したり、入居者の使用により劣化が進んだりして、修繕が必要となる場合が出てきます。たとえば入居者が退去した場合などに行う部屋のクリーニング代などの原状回復費用や、外壁が傷んだために行う定期的な外壁塗装などは、修繕費として費用に計上することができます。

 

一方、修繕費として認められないものとしては資本的支出が挙げられます。これは判断の難しいところもありますが、原状回復というレベルを超えて、以前よりグレードがよくなったと思われるケースが該当します。たとえば外壁をモルタル塗装からタイル張りに変更した場合や、室内の壁紙を以前よりゴージャスにした場合などです。

 

この資本的支出に該当する場合は、その年の修繕費ではなく、減価償却資産として各年に減価償却費として配分していくことになります。

 

【5. 支払手数料】

賃貸物件の家賃の集金や入居者募集や、入居者に対する対応業務などの管理を不動産会社等に委託している場合、管理手数料や仲介手数料などの支払いが出てきます。このような費用は必要経費にすることができます。

 

【6. 専門家報酬】

物件購入時に必要となる不動産登記手続きを司法書士に依頼したときにかかる司法書士報酬や、確定申告を税理士に依頼したときにかかる税理士報酬、また、入居者トラブルに対応するためにかかった弁護士報酬などは、必要経費とすることができます。

 

また、賃貸物件にかかわる顧問として弁護士や税理士等と顧問契約をした場合は、顧問報酬を支払うときも必要経費にできます。

 

【7. 支払利息】

基本的に、金融機関に支払う賃貸物件購入のための借入金に対する利息は、土地建物も必要経費として計上することができます。

 

ただし、不動産所得が赤字となった場合はご注意ください。なぜなら「土地取得に係わる借入金の利息については、損益通算の対象にはならない」という規定があるからです。たとえば不動産所得が赤字で、給与所得の黒字分と損益通算する場合には、土地にかかわる支払利息を除外する必要があります。

 

【8. 雑費】

上記以外で必要経費となるのは、不動産購入や現地視察、交渉や契約のために使った交通費、高速代、ガソリン代、駐車場代、宿泊費などの旅費交通費です。

 

また、賃貸物件の管理等に使用するパソコンやスマホタブレット、電話料やプロバイダー代などの通信費は、必要経費とすることができます。ただし、個人的に使用している部分に関しては必要経費にすることはできず、除外しなくてはいけません。

まとめ

簡単ではありますが、今回は不動産投資において必要経費となるもの、ならないものについて説明しました。不動産投資を行う上で参考になれば幸いです。

 

 

宮路 幸人

多賀谷会計事務所 税理士、CFP

 

会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。

 

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※本連載は、J Sync株式会社が運営する『OWNERS.COM』(https://cf-owners.com/)のコラムを転載したものです。

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