【大災害による、資産の損失を回避せよ】テレビが室内を飛び、エアコンが落下…「阪神・淡路大震災」の教訓から誕生した〈地震に強い部屋づくり〉のノウハウ

【大災害による、資産の損失を回避せよ】テレビが室内を飛び、エアコンが落下…「阪神・淡路大震災」の教訓から誕生した〈地震に強い部屋づくり〉のノウハウ
(画像はイメージです/PIXTA)

1995年1月17日の早朝5時46分。病院の夜勤から戻り、眠りにつこうとした著者を襲った、阪神・淡路大震災。家具が室内を飛び交う衝撃の光景、そして負傷した痛みから、地震に強い部屋づくりの重要性を痛感。実体験に基づき、多額の費用をかけずとも、大切な資産や、自身の身を守る具体的なノウハウを紹介します。

タンスと本棚が倒れ、テレビが顔面を直撃!

1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災。私は当時、吹田市内の病院で看護師として働いていました。その日は夜勤明けで、午前3時半に帰宅。地震が発生した早朝5時46分は、実家2階にある四畳半の自室で眠りについたところでした。

 

ドーンと突き上げるような衝撃で目が覚めると、右へ左へと体を揺さぶられるような大きな揺れが続きました。

 

タンスと本棚が倒れて、いっきに本が落ちてきました。キャスター付きのハンガーラックは、ガッシャンガッシャンと乱暴な音を立てていました。

 

ベッドの上で身を守り、必死にしがみついていました。安全確認のためにふと顔をあげた瞬間、2メートルほど離れたテレビ台から、いまとなっては懐かしい「テレビデオ」がこちらに飛んでくるのが見えました。

 

「あ」と思った瞬間、「痛い!」

 

テレビデオが顔面を直撃し、眼窩骨折をしました。

 

地震が起こると、家の中にある家具やものはありえない動きをします。「落ちる」「倒れる」は想定内かもしれませんが、「移動する」し、かなりの距離を「飛ぶ」こともあるのです。

 

震度7以上で、たいていのエアコンはどすんと落ちます。

 

重いピアノだって倒れますし、動くこともあります。

 

テレビデオが2メートル飛ぶくらいですから、はさみやさいばしなどは塊になって飛んできます。

 

こうした家具やものの「落ちる」「倒れる」「移動する」「飛ぶ」に備えつつ、「安心して住める家」にするのが「地震に強い部屋づくり」の基本です。

 

こう言われると、ものすごく大掛かりなのでは?と思うかもしれません。でも、そんなことはありません。私が提唱する方法は、100均グッズなどのプチプラアイテムを使いながら、大きな手間をかけることなくできることばかりです。

 

小さなことですが、「やる」と「やらない」とでは大違い。「危険かも」「ヤバイかも」と思ったところから、少しずつ始めてみてください。

地震に強い部屋づくりで大活躍する「滑り止めシート」

地震に強い部屋づくりで大活躍するのが「滑り止めシート」です。メッシュになっていてはさみで簡単に切れるものや、シリコンゴム製のもの、シートタイプ、シールタイプなどさまざまなタイプのものが出ています。私は100円ショップで売っているものをフル活用。あらゆる棚に滑り止めシートを敷いています。

 

この滑り止めシートをしているかどうかで、揺れたあとがまるで変わります。2022年1月に起きた大分の地震でも、「なおさんに言われて、とりあえず、滑り止めシートを食器棚に敷いていたのでお皿は一枚も割れませんでした」といった声をたくさんいただき、うれしく思いました。

 

一方で、「とりあえず、100円ショップで買ってはきたんですけど、まだ使ってないんですよね」という人もいます。

 

残念ながら、買っただけではお守りにしかなりません。

 

適当でいいのでカットをして使ってください。なんなら、サイズを合わせて折り曲げるだけでもいい。「ものが落ちそう」なところに敷くだけで、安全指数は格段にアップします。

食器・小物類をケース&ボックスに入れるワケ

滑り止めシートと並んで、私がよく使うのが収納ケースやボックスです。食器棚の食器もリビングで使う小物類も、基本的にケースやボックスに入れてから収納しています。

 

その理由はおもに三つあります。一つはものの居場所が決まるので、片づけやすくなるから。ものがバラバラと散乱していないだけで、被災時にケガをするリスクが下がります。

 

もう一つは、「ケースに入る量までしか持たない」と決めることで、ものが無尽蔵に増えるのを防ぐことができるからです。ものが多すぎると被災時の危険度が上がるのはすでにお話ししたとおりです。

 

そして、もう一つ。被災後、割れたり壊れたりしたあとの片づけが格段に楽だからです。ボックス内に破片がとどまってくれるので、簡単に処理できます。そのうえ、作業の際にケガをするリスクを減らすことができます。

 

ボックスについても、私は100円ショップのものを愛用しています。いまは、形や色、デザインなどさまざまなものが出ています。ただ、割れるものを収納するボックスは、メッシュのものは避けましょう。破片が穴から飛び出してくるからです。

収納ケース+滑り止めシートで、滑り落ちるのを防ぐ

収納ケースやボックスは、底に滑り止めシートを貼って使います。地震の揺れによってケースが滑り落ちるのを防ぐためです。

 

以前はただ単に、底の大きさに合わせて貼っていたのですが、最近になってバージョンアップしました。ケースのサイズより少し長めに滑り止めシートをカットして、ケースの手前側を一回巻いて少し厚みをもたせるのです。手前部分に高さが出て、滑り落ちるのを防ぐ力が強くなります。

 

[図表]収納ケースと滑り止めシートの合わせ技

 

使うのは100円ショップの収納ケースと滑り止めシート、そして両面テープ
使うのは100円ショップの収納ケースと滑り止めシート、そして両面テープ

 

1 滑り止めシートは、収納ケースよりも少し長めにカットします
1 滑り止めシートは、収納ケースよりも少し長めにカットします

 

2 ケースの手前側は、滑り止めシートを一回巻いて厚みを出します
2 ケースの手前側は、滑り止めシートを一回巻いて厚みを出します

 

3 これで完成! 何センチ分、巻くとか考えなくてもOK。適当です
3 これで完成! 何センチ分、巻くとか考えなくてもOK。適当です

 

わざわざきれいに計って切らないことが、むしろ防災力アップにつながるなんて、ちょっとラッキーなポイントでした。

 

 

辻 直美
国際災害レスキューナース
一般社団法人育母塾代表理事。

※本連載は辻直美氏の著書『プチプラで「地震に強い部屋づくり」』(扶桑社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

プチプラで「地震に強い部屋づくり」

プチプラで「地震に強い部屋づくり」

辻 直美

扶桑社

『プチプラ防災』の辻直美さん書籍第三弾。 自身が阪神淡路大震災で被災したことをきっかけに、レスキューナースとなった辻直美さん。国内外31カ所の被災地から学んだ自衛術を発信していますが、実は収納整理アドバイザー2級…

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