写真提供:オオカワ建築設計室 写真:haga gensho

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回は、寒すぎる日本の家が健康に与える様々な影響についてみていきます。

足下が寒い家では、様々な疾病・症状を有する人が多い

『得られつつある知見-6』では、「床近傍の室温が低い住宅では、様々な疾病・症状を有する人が有意に多い」と指摘しています。床上1mと床近傍室温との組み合わせで温暖群、中間群、寒冷群を均等に3群に分けたところ、[図表6]に示す通り、中間群の家に住む人は、高血圧、糖尿病で通院している人の割合、過去1年間に聴こえにくさを経験した人の割合が有意に多いということです。

 

[図表6]

 

また寒冷群では、高血圧、脂質異常症で通院している人の割合、過去1年間に聴こえにくい、骨折・ねんざ・脱臼を経験した人の割合が有意に多いのだそうです。

 

なお、この骨折・ねんざ・脱臼に注目してみると、厚生労働省の令和2年(2020)『人口動態統計(確定数)の概況』の統計表による高齢者の「不慮の事故」の死者数は、35,000人/年を超えています。「不慮の事故」とは、自然災害や交通事故をのぞく「誤嚥などの不慮の窒息」「転倒・転落」「不慮の溺死および溺水」などを指します。

 

また消費者庁による東京消防庁「救急搬送データ」(平成28年)の分析データでは、高齢者の救急搬送者数は、「転倒・転落」によるものが58,351人と最も多く、全体の8割にも上っています。そしてそのうち57.7%が住宅等の居住場所で発生しています。つまり東京消防庁だけで、33,669人/年もの方が住宅等の居住場所で転倒・転落して救急搬送されていることになります(図表7)

 

[図表7]

 

上記の『得られつつある知見-6』で寒冷群の住宅では温暖住宅群に比べて、骨折・ねんざ・脱臼を経験した人の割合が調整オッズ英1.65倍にも上ることを踏まえると、高齢者の住宅内での転倒・転落事故と家の寒さとの間には密接な関係があるように思われます。

暖かい家では、居住者の活動量が増える

最後の『得られつつある知見-7』では、「断熱改修に伴う室温上昇によって暖房習慣が変化した住宅では、住宅内身体活動時間が有意に増加」しているのだそうです。

 

[図表8]に示す通り、断熱改修(または非改修の)前後2回の調査データを用いて分析した結果、断熱改修によって居間や脱衣所の室温が上昇し、コタツや脱衣所の暖房が不要となった場合などに、1日平均の住宅内軽強度以上活動時間は、男性では65歳未満で約23分、65歳以上で約35分、女性では65歳未満で約27分、65歳以上で約34分、有意に増加しています。

 

[図表8]

 

厚生労働省は『健康づくりのための身体活動基準2013』で、糖尿病・循環器疾患等の予防の観点から、現在の身体活動量を少しでも増やすことを世代共通の方向性とし、「今より10分多く体を動かそう」をメインメッセージとした活動を推進しています。断熱改修によって室温が上昇する場合、住宅内での行動変容(暖房習慣変化)は、身体活動増進の取組みに大きく寄与する可能性があるということのようです。

 

断熱改修工事を行って、コタツがいらなくなった家では、コタツから出るのが億劫ということがなくなる、また脱衣室や浴室等が寒くなくなるため、寒い場所に行くのが億劫ということがなくなり、家の中での活動量が増えるということだと思われます。家全体が均質に暖かくなることは、高齢者の活動量を増やすという面からも、健康増進に重要な要素のようです。

 

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