※画像はイメージです/PIXTA

中小企業や上場企業オーナーが抱える問題の中でも事業承継や相続は関心の大きなところでしょう。実際に、「将来、相続税はいくらかかるのだろう?」「相続が起きてしまったら残された家族が揉めないだろうか?」といった心配事は尽きないはずです。特に業績の好調な企業や社歴が長い中小企業は、相続税の対象となる自社株式の相続税評価額が多額になり、将来の相続時に多額の納税負担に苦しむことも珍しくありません。企業オーナーが取り組むべき事業承継対策についてみていきましょう。

2.株価引き下げ対策

前章の解説にありましたように、生前贈与や相続の際に自社株式の評価が高い状態ですと税負担が重くなってしまいますので、一時的に自社株式の評価を引き下げる対策を行う必要があります。

 

自社株式の評価は、①利益 ②純資産 ③配当の3つの要素で主に決まります。つまりこの3つの要素が高い状態だと、自社株式の評価が高くなるのです。このためこれらの要素を引き下げて調整することが必要となります。自社株式の評価引き下げのためには、大きく2つの方法があります。

 

①利益を減らす=損を出す

まず利益を減らすためには、事業に必要な売上を減額させることは通常難しいため、臨時の損失を出すということが考えられます。これは法人税の節税対策と近いところもあります。メニューとしては下記のようなものがあります。

 

●損金性の高い生命保険を活用する

●役員の生前退職金を支給する

●オペレーティング・リース(航空機、船舶等)を利用する

●含み損のある不動産を売却して損失を顕在化させる

 

その他にもありますが、代表的なものは「退職金」でしょう。事業承継のバトンタッチの際に企業オーナーが会社を退職し、退職金を支給します。この退職金は会社の費用にすることができますので、退職金を支給することで会社の利益が大幅に減り、結果としては自社株式の評価引き下げにつながるのです。

 

しかし役員退職金は無制限に支給できるわけではなく、税務上損金にできる限度額が下記のように決められています。

 

税務上の役員退職金限度額の計算式

最終役員報酬月額 × 役員在任期間 × 功績倍率

 

通常、社長であれば、功績倍率は3倍程度までは問題なく認められますので、最終役員報酬月額が200万円程度あれば、次のようになります。

 

200万円×30年×3倍=1億8,000万円

 

また株の譲り渡し時期としても社長が退任して後継者へバトンタッチできるいいタイミングですので、事業承継のスキームとしてよく利用されるのも納得です。

 

②会社の「純資産」を減らす

次に会社の純資産を減らす対策です。純資産は長年積み重ねてきた会社の利益ですので、単年度の利益を減額させるよりも難しいものです。そこでよく登場するのが不動産です。

 

会社で不動産を購入することでなぜ純資産が減額するのか分からない人も多いと思いますが、自社株式の評価を行う際に会社が所有する資産は相続税評価額で計算できるのです。不動産の相続税評価額は路線価や固定資産税評価額を利用できるため、時価よりも低くなります。

 

たとえば、5億円で賃貸マンション一棟購入すると、相続税評価額は約半分となります。そうすると時価と相続税評価額の差額である2億5,000万円ほど、純資産が減るのです。

 

ただし、会社でこの不動産の節税対策を行うためには注意点があります。個人でしたら不動産購入後すぐに相続が発生しても相続税評価額を用いることができますが、法人で購入した場合には購入してから3年間は時価で評価しなければならず相続税評価額が利用できないのです。このためこの対策を行うのであれば、早めの準備と着手が大切になります。

 

③配当額を調整する

自社株式の評価の3つ目の構成要素である「配当」については比較的簡単に調整が可能です。これは同業他社よりも多く配当を出していれば、単純に配当額を減額すればいいのです。

 

ただし3期連続で配当額をゼロとしてしまうと、今度は別の部分で問題が生じますので注意が必要です。配当が3期連続でゼロとなると、比準要素1の会社に認定される場合があり、そもそもの評価方法選択時に有利であるといわれている類似業種比準価額方式が使える割合が減ってしまうためです。

 

このため、配当は出すけれど、金額を多くし過ぎないという調整を行うことによって、自社株式の評価を引き下げます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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