(※画像はイメージです/PIXTA)

自動車ユーザーが強制加入する「自賠責保険」の保険料が、2023年から引き上げが決まっています。交通事故が減少傾向にあるにもかかわらずです。その背景には、保険料の運用益約6,000億円が「一般財源」に貸し出されたまま未返済という理不尽な事情があります。あわせて、自賠責保険自体の存在意義が問われています。本記事では、自賠責保険の補償内容と存在意義について検証します。

ドライバーの4人に1人が「無保険状態」!

ところが、統計によれば、ほぼ4人に1人が任意保険に加入していないという実態があります。

 

すなわち、損害保険料算出機構「自動車保険の概況(2021年度)」によれば、2021年3月末時点で、「対人賠償保険」「対物賠償保険」の加入率は、全国でみると「対人賠償保険」が75.1%、「対物賠償保険」が75.3%となっています。

 

なお、都道府県別にみると、加入率が最低なのは沖縄県で、「対人賠償保険」が54.1%、「対物賠償保険」が54.2%となっています。これに対し、加入率が最高なのは大阪府で、「対人賠償保険」が82.8%、「対物賠償保険」が83.0%となっています。

 

単純計算すると、交通事故の被害者となって死傷した場合、相手方から正当な賠償金を確保できない確率が4分の1もあるということです。

 

なお、相手方が無保険であるケースや任意保険の賠償金額が不十分であるケースに備えて「無保険車傷害特約」を付けることができます。しかし、それでもカバーしきれないことがあります。

 

このことからすれば、事実上、任意保険への加入こそが義務と考えるべきといえます。むしろ、自賠責保険があるために任意保険に加入していない人がいるという実態すらあるといっても過言ではありません。

「理不尽な保険料値上げ」で自賠責保険の存在意義は?

このように、任意保険への加入こそが事実上の義務と考えるべきであるとすると、自賠責保険の存在意義はどこにあるのかという疑問が生じます。

 

しかも、自賠責保険については、最近、交通事故が減少傾向にあるにもかかわらず、2023年10月から保険料の引き上げが行われるという、理不尽な事態が発生しています。

 

その原因は、保険料の運用益から「一般財源」に多額の貸付が行われ、いまだに約6,000億円が返済されていないという、いわば財務省の失態にあります。

 

すなわち、1994年、1995年に税収不足を理由として、「自動車安全特別会計」から一般財源へ「繰り入れ」という名目で総額約1兆1,200億円の貸し出しが行われました。ところが、2003年以降、厳しい財政事情を理由として返済が行われない状態が放置されてきたのです。

 

ようやく2018年から返済が再開されましたが、現在も約6,000億円が返済されていない状態です。

 

この件について、鈴木俊一財務大臣が2022年11月11日の記者会見で、今なお直ちに返済するめどが立っていないことを明らかにしました。

 

自賠責保険料の値上げは、返済が行われないことにより不足するおそれがある分をカバーするものです。これは、自動車利用者・国民に対し、いわれのない負担を強いるものです。

 

先述のように、自賠責保険は現在、事実上、被害者救済の役割を十分に果たしていないどころか、その妨げでさえあります。しかも、自賠責保険料が一般財源に流用され返済もされないというぞんざいな扱いを受けていることを考慮すると、自賠責保険の制度自体が形骸化しており、存在意義自体に疑問が生じていることは明らかです。

 

合理的な方向性として考えられるのは以下の2つです。

 

・自賠責保険自体を廃止し、任意保険への加入と「対人賠償」「対物賠償」を無制限とすることを義務付ける

・自賠責保険の内容を「対人賠償」「対物賠償」いずれも無制限とし、保険料とその運用益の一般財源への流用を一切禁じる

 

今後、自賠責保険の制度を存続させるにしても、廃止するにしても、交通事故の被害者救済という根本的な制度目的に立ち返って検討することが求められています。

 

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