(※写真はイメージです/PIXTA)

年金の支給開始は65歳ですが、受け取る側からすれば60歳から75歳までの15年間で、いつでも好きな時から受け取り始めることができるということができます。セカンドキャリアコンサルタントの高橋伸典氏が著書『退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

年金の繰り上げ受給をする場合の注意点

▼年金についての不安

 

髙橋:本日は定年関係の著書を多く書かれている大江英樹さんに、サラリーマンが定年を迎えて不安に思うことについて、どのように考えていけばいいか、お話を聞かせていただきたいと思います。

 

大江:はい、よろしくお願いします。

 

髙橋:定年を前にして不安に思うことに、「年金」「お金」「仕事」があると思います。

 

まず年金についてお聞きします。高齢社会になって年金はこれからもらえるのか、大丈夫なのかと思われる方も多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか?

 

大江:少子高齢化が進むことは、昔からわかっていました。日本が高齢化社会に入ったのは1970年ですからね。だから今までも、いろんな手を打ってきています。かつての日本は高度成長を経験してきたおかげで潤沢な年金の積立金を確保することができました。加えて少子高齢化に備えた様々な制度の改定も行われてきています。

 

今後何があっても年金は万全だとまでは言いませんけど、少なくとも普通のサラリーマンが老後の日常生活をおくるだけの金額は、年金保険料さえちゃんと収めていれば、大丈夫と考えていいと思います。事実、国からもらう公的年金だけで生活している世帯は48.2%、すなわち2世帯に1世帯は、年金だけで生活しているんですね。

 

髙橋:意外に多いんですね。少し安心しました。ところで年金を何歳で受け取るか考えている方は多いと思います。最近は繰り下げ受給を推奨する動きもあり、70歳まで受給を延ばせば65歳から受給を開始するよりも42%年金受給額が増額する、2022年の4月以降は、「75歳」まで延長できるので、その時は84%も増額すると言われています。もちろん余裕のある方はそうしてもいいと思いますが、あまり余裕がない場合は、早い段階で受け取ってもいいのでしょうか。

 

大江:年金の支給開始は65歳ですが受給、すなわち受け取る側からすれば60歳から75歳までの15年間で、いつでも好きな時から受け取り始めることができるということなんです。ですから、それはその人のライフプラン次第で繰り下げるか、繰り上げるかを決めればいいわけです。何歳からにすべきということはないと思います。

 

髙橋:その時の状況に応じて、自分が良いと思う時期を選べば良いということですね。

 

大江:はい、そういうことです。ただ、繰り上げ受給をする場合には、気をつけねばならないことが3つあります。一つは、一回繰り上げをすると二度ともとに戻れないということです。長生きした場合には、先に行けば行くほど後からもらった場合との開きが大きくなるということなので、それをわかった上でするということです。

 

二つ目は、繰り上げすると受給開始以降に自分が障害者になったときに、障害基礎年金が原則的に受け取れないのです。自分が障害者になったにもかかわらず、障害基礎年金が受け取れないということであれば高齢期には不安ですから、これだけは気をつけた方がいいですよね。

 

三つ目はちょっとややこしいのですが、女性の場合に気をつけるべきことです。例えば老齢厚生年金を受け取っていた夫が亡くなった場合、妻は遺族厚生年金を受け取れます。ところが妻が自分の老齢基礎年金を繰り上げした後に受け取り始めると60代前半は自分の年金と夫の遺族厚生年金は両方受け取ることはできず、どちらかを選ぶことになります。

 

普通は額が大きい遺族厚生年金を選ぶので、繰り上げたはずの自分の年金はもらえなくなります。65歳からは両方受け取ることができますが、その場合の自分の基礎年金は減額された金額になってしまうのです。そういうことを理解した上でやるということです。

 

髙橋:なるほど。繰り上げ受給にも注意点があるのですね。

 

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※本連載は、髙橋伸典氏の著書『退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書

退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書

髙橋 伸典

日本能率協会マネジメントセンター

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