中国、流行語が如実に示す社会の実情…〈パンデミック〉〈社会的ストレス〉がキーワード

中国、流行語が如実に示す社会の実情…〈パンデミック〉〈社会的ストレス〉がキーワード
(画像はイメージです/PIXTA)

新型コロナのパンデミックに伴い、日本でも様々な流行語が発生したが、日本以外で今や唯一日常で漢字を使用する中華圏、特に中国本土でどのような流行語(熱詞)が発生しているのか、その世相を探る意味で興味深い。中国社会科学院語言研究所や上海語言文字週報の熱詞選定に関わっている中国人学者は「熱詞は多くの人に使われていることが前提だが、社会的価値(時代の特徴を反映しているか)と言語学的価値(人々の言語生活を豊かにする創造性があるか)が重要」としている。実情を探る。

社会的ストレスと若者の微妙な心理を反映

近年、特に若者の間で爆発的に流行し、社会の雰囲気を反映する熱詞として注目されているのが「内巻(ネイジュエン)」と、それに関連した「躺平(タンピン)」だ。

 

「内巻」はもともと英語のinvolutionを中国語に訳した社会学用語で、社会が一定の発展段階に入った後、次の段階に移行できず停滞することを指す。学生がネット上で、停滞から生じる有限な資源の奪い合い、組織内の無意味で非理性的な競争、そこから生じる社会的ストレスを表す用語として使用し始めたのが始まりだ。

 

ほどなく「躺平」、つまり「寝そべって何もしない」→「諸々の社会的ストレスから解放されるために競争から退出する」が流行。「躺平こそ正義」とするネット上の書き込みに賛同が集まり、書き込み者は「躺平学大師(大先生)」と称されている。「躺平族」は仕事をしない、家も車も買わない、何もしない主義の若者を指す。

 

「内巻」や「躺平」も含め、熱詞が政治経済関係でも普通に使われるようになっている。2019年、中国共産党の公式文書が、党員がしてはならない行為として、近年ネット上でよく使われる「高級黒(手の込んだ風刺や皮肉)」と「低級紅(露骨なごますり)」を初めて使用。

 

2021年は中国共産党創立百周年の年だったが、習近平氏が、長老が躺平抵制、つまり寝そべって建党百年祝賀行事をボイコットしていると不満を漏らしたとされ、また2021年12月に開催された某セミナーで、元重慶市市長が現行五カ年計画のキーワードの1つ「国内大循環」について、「これは内巻や躺平ではまったくなく、より広い範囲での一層の対外開放を意味する」と発言したと報じられた。

 

(出所)各種中国語ネット
[図表1]新しい「協力しない」運動―躺平 (出所)各種中国語ネット

 

「躺平」は「内巻」に対する若者の一種の反抗で、これまでの中国の発展様式を反省し見直し始めた動きとして肯定的に評価する声もあるが、中国の主要メディアは、「若者は創造的貢献をすべきで、躺平主義では未富先躺になる」「このような毒鶏湯は恥ずべきもので、何の価値もない」「経済にも悪影響が及ぶ」と批判的だ。

 

「未富先躺」は「豊かになる前に先に横になる」で、長年中国でいわれてきた「未富先老」、つまり豊かになる前に高齢化社会に入ってしまうとの表現をもじった表現。「毒鶏湯」は表向き心身を休めるチキンスープにみえるが、実は裏に毒を持った意図が隠されていることを指す。他方、若者がデモなどの物理的な社会運動ではなく、ネットを通じてこうした形でその不満を表すことは、社会安定維持の観点からは悪くないとする意見もある。

子どもが教育熱心な親から受ける圧力を表すワードも

教育に関わる社会的ストレスを表す熱詞として「双減(シュワンジエン)」「鶏娃(ジーワー)」がある。

 

中国では子どもが教育熱心な親から過度の圧力を受けていることが社会問題になっているが、「双減」は2021年7月に党中央弁公室と国務院が「義務教育過程にある子どもについて、学校の宿題と学外の各種習い事の2つの負担を減らす意見」を発出したことから、「2つの減」として流行。「鶏娃」は常に子どもに「打鶏血」、つまり鶏の血を打つ→発奮させ良い成績をとらせようとする教育熱心な親を持つ子どもを指す熱詞としてネット上で流行。「北京のトップ鶏娃も20年後はただの人」などと使われている。

 

派生熱詞の「青蛙(娃)」「牛蛙」「素鶏」は各々、「普通の子ども」「特に成績優秀な子ども」「鶏血式の素質教育(芸術やスポーツなど各種習い事)」を指す。

 

(出所)各種中国語ネット
[図表2]教育熱心な親達(家長群)の圧力に押しつぶされる子ども (出所)各種中国語ネット

 

若者の微妙な心理を表す熱詞も多い。たとえば「凡爾賽(ファンアーサイ)文学」。「自分の優越性を他人に見せたいが、自慢しているとは思われたくない」という心理で、「彼は金持ちで私に高級車をプレゼントしてくれた。でも顔は超土(チャオトゥ)、チョーダサイ」といった書き込みはその典型だ。「凡爾賽」は「ベルサイユ」の漢字表記だが、これを言い出した者が「ベルサイユのばら」の愛読者だったということで、特段の意味はないらしい。

 

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